プリズム眼鏡が適応にならない5つのケースと様子を見るべき3つのケース
どんな患者さんにプリズムを提案すべきかよくわからないな
斜視の人には勧めていいんだよね?
プリズム眼鏡はうまく適合すれば複視が
消え、とても快適に日常生活を送れる
ようになります。
しかし、斜視があれば誰でも
適応するわけではありません。
プリズムが合う人、合わない人がいる
ので、「斜視=プリズム」という
固定観念はいったんストップです。
プリズムの処方を進めていくべきか、
一つの判断材料としてお役立て下さい。
- プリズムが合わない人
- プリズム処方は様子を見た方がいい人
- その理由と対策
プリズム眼鏡が適応になる場合
プリズムが適応になるのは、
- 複視があるとき
- 複視の自覚はなくても違和感や眼精疲労があるとき
です。
複視がある上でプリズム眼鏡の処方が
効果的なのは、
プリズム眼鏡をかけて複視や違和感が改善できる場合
です。
患者さんの
- 年齢
- 斜視角
- 斜視歴
- 複視の感じやすさ
- 抑制の有無、広さ、深さ
- 眼位コントロール力
など複合的な理由によっては、
プリズムを入れたからと言って
満足度が上がるとは限りません。
ただし「あきらかにプリズムは無意味」
と思われる場合以外、プリズム眼鏡は
処方してみないとわからないものです。
プリズムの役割をきちんと説明し、
患者さんの理解を頂いた上で、
適応になりそうであれば積極的に
提案すべきでしょう。
※そのほか、静止位のある眼振や輻輳を誘発させて抑える眼振でもプリズムは活躍しますが、斜視とは役割が異なるため、本記事では割愛しています。
プリズム眼鏡の適応にならない場合
「絶対」とは言えないけれど、
プリズムの適応にはならないだろうと
考えられるケースを紹介します。
①複視がない時
斜視、間欠性斜視があったとしても、
複視がない場合はプリズムの適応にならない
ことが多いです。
複視があるかどうかは、
- 外見上、斜視がありそうなのに「ダブる」という回答がない
- 斜視検査を実施して、眼位がずれている時も複視の回答がない
- 片眼に赤ガラスを入れても複像を感じていない
などで判断できます。
ただし、明確な複視がなくても「なんとなく疲れる」といった主訴がある場合、プリズムを試してみる価値はあります
②正面視以外の複視がある時
プリズムは基本的に正面視(第一眼位)
と下方視での複視を改善するので、
側方視の複視には対応できません。
「まっすぐならいいんだけど、
右を向くとダブるんだよね」
と言う患者さんには、
- プリズムはまっすぐ見たときしか使えないこと
- 側方視の複視には顔を対象物に向けて対応すること
などを伝えて下さい。
③大角度の斜視がある時
50~60Δの大角度の斜視の場合、
両眼視機能が備わっていたとしても、
複像が離れすぎていて複視を自覚して
いないことがあります。
膜プリズムなどで中途半端に補正して
しまうと、複像が近づき複視を感じ
やすくなる可能性があるため、
角度の大きい斜視はプリズムで何とかしようと思わない方がいい
かもしれません。
ただ、人によっては50~60Δ外れて
いても、眼位のコントロールができる
こともあります。
この場合、疲れなどの訴えがあれば膜プリズムを検討してもいいでしょう
④プリズムでも改善しない時
プリズムを入れれば改善しそうな
間欠性外斜視でも、プリズムの装用
テストで必ずしも「楽になる!」
とは限りません。
プリズム特有の収差や距離感のつかみ
にくさがあるため、
といった声もよく聞かれます。
違和感がある場合はプリズム量を減らし
ますが、それでも改善しなければその旨
を記載し、プリズムは不適応ということ
になります。
⑤回旋複視の時
教科書で習った通り、やはり
回旋複視はプリズムの適応にはなりません。
そもそも回旋斜視はロータリープリズムや
マドックス杆、シノプトがないと定性定量も
できず、本人の主訴頼みになります。
頭位を左右に傾斜すると改善する
ため、代償頭位が対症療法となります。
ただし、
- 水平垂直斜視が混在している場合、水平垂直のプリズム補正で改善する可能性
- 上斜筋麻痺の場合は自然に治癒する可能性
があることは覚えておいて下さい。
ちなみに、眼底写真で眼球の回旋を確認することはできます
プリズム処方の様子を見る場合
複視があり、自覚的にもプリズムで
複視が改善する場合でも、次のケース
ではいったん処方は待って下さい。
※医師の指示を除く
⑥変動がある時
原因が何であれ、
受診のたびに斜視角が変わる場合
は、眼位の変動が落ち着くまで
待った方がいいことがあります。
処方すべきプリズム量が定めにくく、
プリズム眼鏡を作ってもすぐ合わなく
なったり、作り替えにコストがかかる
からです。
ただし、
- 数か月の間、一定の範囲内での変動である
- とにかく複視が辛い
以上の場合は、プリズム眼鏡の
作り替えの可能性を十分に伝えた
上で処方することもあります。
⑦自然治癒が見込まれる時
糖尿病や外傷などによる斜視は、
数か月で自然と治ることがあります。
日内変動や日による変動もあり、
プリズム眼鏡を作製しても
「ちゃんと見える時とダブる時がある」
ように不安定です。
変動があることは患者さん本人も
自覚していることが多く、
- 了承の上でプリズム眼鏡を処方するか
- しばらく様子を見るか
ご本人とよく相談して下さい。
⑧急に斜視を発症した時
急性斜視を発症した場合は、斜視検査を
行なっても、すぐにプリズム眼鏡の処方
をすべきではありません。
全身疾患や脳新患による可能性があり、
ただちにMRIを受けに脳神経外科を
受診し、原因の特定を急ぐことが
多いからです。
以上のような、
これまでは何ともなかったのに急に
ダブりが出たときは、すみやかに
診察へカルテを回しましょう。
こういう時は悠長にプリズムの話をしている場合ではありませんね
まとめ
複視にはプリズムが適応となりますが、
必ずしもプリズムで複視を改善できる
とは限りません。
ダブりを訴えているから即プリズム!
ではなく、このダブりはプリズムで
補正できるのか、補正できるとしたら
今日プリズム処方していいか、一度
考える材料にしてみてください。