子どもに眼鏡をかけさせたくない保護者の説得方法
「眼鏡をかけると目が悪くなる」
「まだ子どもなのに、眼鏡をかけさせるなんてかわいそう」
などといった理由で、眼鏡処方を
拒否する保護者は一定数います。
そのような保護者に対しては、
眼鏡や近視に対する正しい知識や
眼鏡装用の必要性を説明し、説得
する必要があります。
この記事では、子どもの眼鏡処方を
拒否する保護者への説得方法を解説
します。
具体的な説明例や、保護者の眼鏡
に対するよくある思い込みなども
まとめました。
保護者と話すのが苦手な人、必見です!
保護者を説得する上での心構え
まずは、保護者への説得をスムーズに
行うために必要な心構えについて解説
します。
保護者の気持ちを受け入れる
まずは保護者の
「眼鏡をかけさせたくない」という気持ち
を受け入れましょう。
眼鏡装用の重要性を熟知している
視能訓練士としては、
- 眼鏡処方を拒否する保護者の気持ちが理解できない
- 「なぜわかってくれないのだろう」とネガティブな感情を抱いてしまう
といったこともあるかもしれません。
しかし、一方的で責めるような説得
では、保護者の理解が得られず逆効果
です。
近視や眼鏡に対する知識不足や
漠然とした不安が根底にある
場合も多いです。
保護者に寄り添うことで信頼関係が
築きやすくなり、説得もスムーズに
なります。
信頼できると思わせる態度で臨む
保護者説明や説得の際は、
- 保護者としっかり目を合わせて話す
- 堂々とした態度で接する
など、
「この人の言うことは信頼できそうだな」
と思わせるような態度を心がけて
下さい。
保護者からの質問にもしっかりと
答えられるように、近視や眼鏡
装用の重要性についてよく理解
しておきましょう。
よくある質問に対する説明例を、
自分の中で用意しておくのも
おすすめです。
保護者への説得で使える3つのデメリット
保護者の心に響きやすい、
「眼鏡をかけない場合のデメリット」
を3つ紹介します。
1.見た目が悪くなる
はっきり見ようとして日常的に
目を細めるクセがついてしまうと、
整容面でも気になります。
特に子どもが女の子の場合に
効果的なデメリットです。
「すでに目を細めるクセがついてしまっている(=すでに見た目が悪い)」
場合はより説得力が増すため、
視力検査中は目を細める様子が
ないかどうかチェックしましょう。
「外見が悪くなる」とハッキリ伝えるのも効果的です
2.勉強に支障が出る
近視で黒板がはっきり見えないと
勉強にも支障をきたします。
黒板の文字を後ろの席から読み取る
ためには、中学生で0.9以上の両眼
視力が必要という調査結果があります。
また現在の中学校の標準的な教室の黒板から教室の後列の席までの平均距離の7.7mでは0.9以上、最長距離の8.7mでは1.0以上の両眼視力が必要であった。
「教室における黒板の文字の見え方の検討― 視力が 0.7 以上あると黒板の文字が見えるのか ―」日本視能訓練士協会誌
小学生であれば黒板の文字のサイズが
大きいので、0.7~0.8の視力は必要
だと考えられます。
と主張する保護者に対しては、
- 学年が上がるごとに黒板の文字がどんどん小さくなること
- 移動教室では一番前の席でも黒板が遠い場合があること
などを説明して下さい。
学年が上がることに「毎回前の席にしてもらう」という融通は利きにくくなります
3.将来的に困る
眼鏡をかけないまま成長した場合、
例え本人が日常生活に不便を感じ
なかったとしても、
運転免許の取得や職業選択の上で視力の制約を受ける可能性
があります。
近視が進んだ状態で初めて眼鏡を
かける場合は違和感が強く、慣れる
までにも時間がかかります。
と言う保護者に対しては、CLを装用
する際には必ず眼鏡も併用する必要
があることを説明して下さい。
目に傷があってCLを使えない場合は眼鏡が必要ですが、眼鏡がかけられないと生活に支障が出ます!
保護者への説明例とよくある思い込み
ここからは、
- 「眼鏡をかけさせたくない保護者」
- 「完全矯正に近い度数の眼鏡をかけさせたくない保護者」
2つのタイプの保護者に対する説明例と、
よくある思い込みへの回答例を紹介します。
1.眼鏡をかけさせたくない保護者
- 眼鏡をかけると目が悪くなると信じている
- 外見上の見栄えが悪くなることに抵抗がある
- 眼鏡が必要なほど視力が悪いと思っていない
この場合、保護者自身に近視や屈折
異常がなく、眼鏡をかけたことがない
という方が多いです。
眼鏡をかけないデメリットを説明して説得する例
- 近視がある常に目を細めるクセがついてしまい、結果的に眼鏡よりも見栄えが悪くなる。
- 黒板の字を読み取るために必要な視力は両眼0.8前後だが、現在の視力は〇〇であり足りていない。
- 黒板の字は学年が上がるごとに小さくなるため、このままだと勉強にも支障をきたしてしまう。
眼鏡をかけると目が悪くなると思っている保護者への回答例
- 「眼鏡をかけると目が悪くなる」というのは、実はまったくの誤解である。
- 近視の進行は身長が伸びるのと同じように、眼球が成長することによるもの。
そのため、眼鏡をかけてもかけていなくても、眼球の成長(近視の進行)を完全に止めることはできない。
- むしろ、眼鏡が必要な視力にも関わらず眼鏡をかけないと、黒板の字が見えないなど勉強や日常生活にも影響が出てしまう。
2.完全矯正眼鏡をかけさせたくない保護者
- 完全矯正に近い度数の眼鏡をかけると、目が悪くなると信じている
- 保護者自身が、よく見える度数の眼鏡だと疲れる・近くが見えない(老視)
完全矯正の重要性を説明する例
- 完全矯正に近い度数の眼鏡で、常にはっきり見える環境を整えることは、子どもの発達のためにも重要。
- また、良く見える度数の眼鏡をかけると目が悪くなるというのはまったくの誤解である。
- 子どもはピント合わせの力が強いため、度数が強すぎなければ疲労感はなく、手元が見えにくいこともない。
完全矯正で目が悪くなるわけではないことを説明する例
本来のクリアな見え方によって、脳へ正しい視覚情報が送られることが子どもの発達においても重要。
完全矯正に近い度数で目が悪くなるというのは誤解で、むしろ弱い度数の眼鏡の方が近視を進行させるという報告もある。
また、弱い度数(ぼやけた見え方)よりも完全矯正に近い度数(はっきりした見え方)の方が楽に見えるため、目も疲れない。
低矯正よりも完全矯正の方が近視が進行しにくいということです
まとめ
眼鏡処方を拒否する保護者に対しての
説得に、苦手意識を抱いている人も
多いかもしれません。
しかし、保護者の「眼鏡をかけさせた
くない」という気持ちの根底には、眼鏡
や近視に対する知識不足や、よくわから
ないことに対する漠然とした不安がある
場合も多いです。
まずはそれを理解した上で保護者の気持ち
を否定せずに受け入れ、理論的に眼鏡の
必要性や眼鏡をかけないことのデメリット
を説明しましょう。
参考:Under-correction of human myopia – Is it myopigenic?