不同視の眼鏡処方がうまく行く!4つのポイントと処方例
不同視の眼鏡処方って結局どっちの度にどのくらい合わせるのが正解かわからない!
見えている方に合わせたら度の強い方は視力が出ず、両眼視ができないのでは?
両眼しっかり合わせたら、くらくらしてかけられないのでは?
結論、不同視の眼鏡処方は患者さん一人
一人のこれまでの生活がどうだったか
によって、処方する値が変わります。
不同視の眼鏡処方で抑えておきたい要点
をまとめました。
不同視の眼鏡処方がうまく行くためのチェックポイントがわかる
この記事を書いた人
- 視能訓練士歴9年
- 斜弱、眼鏡処方、GPが得意
不同視の眼鏡処方で最重要なのは「自覚」
不同視の眼鏡処方で一番重要なのは、
患者さん本人の「自覚」がどうなのか?
という点です。
不等像差は5%以内に抑えたいところ
ですが、すべての眼科にアニセイコニア
テストが置いてあるわけではないため、
数値を追うより患者さんの自覚に
準じた方が現実的です。
学校では
「不同視は不等像視の原因になるから、眼鏡を合わせるなら左右差2D以内が望ましい」
などと習いました。
しかし実際には、
2D以上でも平気な人もいれば、
1.50D以下でもダメな人もいる
のです。
教科書的な基準値は頭に隅に残しておき、
まずは目の前の患者さんを見て下さい。
不同視の眼鏡処方の4つのポイント
不同視の眼鏡処方には、
これまでどうやって過ごしてきたか?
これまで両眼視は機能していたか?
がとても重要です。
次の4点を必ず確認して下さい。
- 眼鏡をかけていたか
- コンタクトレンズを併用していたか
- 斜視はあるか
- 弱視はあるか
①眼鏡をかけていたか
これまで眼鏡を使ってきたなら、
- 完全矯正に対して左右差はどうか
- どのようなJBの使い方をしているか
- JBの問題点は何か
などをしっかり聞き出します。
どんな眼鏡なら慣れられそうかの
目安になる地重要な情報です。
②コンタクトレンズを併用しているか
コンタクトレンズ(CL)を併用している
場合は、左右差のある眼鏡に慣れていない
可能性があるため、CLの度数やどのような
使い方をしているのか確認して下さい。
悪い方だけCL矯正している、CLの上から眼鏡をかけているということもあります
片眼だけCL矯正している場合は不同視
が解消されているはずなので、CL矯正下
で眼鏡処方する際は通常通りの処方となり
ます。
③斜視はあるか
不同視で斜視になっている場合は、
- 素早い交代視をしていると左右差が気になるかもしれない(不同視を意識した眼鏡処方をする)
- 恒常性の斜視なら不等像を感じていないかもしれない(不同視を無視した眼鏡処方ができる)
などと、何通りも考えられます。
このあたりは斜視角や抑制の程度に
よって個人差がかなりあります!
④弱視はあるか
片眼が不同視弱視の場合はかえって
簡単で、患者さんの生活スタイルや
JBに基づいて処方するとそれほど
大きな問題にはなりません。
左右差があっても両眼視機能がなけ
れば関係なので、もともと両眼視でき
ていたかどうかが不同視+斜視(弱視)
のポイントになります。
ただし左右の屈折差があると外見上目の大きさが変わるので、整容重視で屈折差を調整するかどうかご本人と相談して下さい
不同視の眼鏡処方の例
不同視の眼鏡処方例を3つ紹介します。
不同視にも様々なケースがあるので、
ほんの一例と思って下さい。
左右差をできるだけ縮める例
60代女性 | 右眼軸長25㎜ 左眼軸長24㎜ |
完全矯正値 | R (1.2× -4.50D) L (1.2× -2.75D) |
使用眼鏡度数 | R (0.2×JB -2.25D) L (0.5×JB –1.75D) |
眼鏡処方度数 | R (0.4× -2.75D) L (0.8× -2.25D) |
主訴
- JBだと遠くが見づらい
状況
- JBは数年前に作製
- 仕事はパートでレジ打ち
- 運転はしない
- 日中はほとんど眼鏡をかけない
- 近くは裸眼で見ている
問診
何を見る時に困っている? | 映画を見る時 |
今のJBはいつ使う? | テレビを見る時 (仕事中はほぼ裸眼) |
JBを常用しない理由は? | 普段からかけないため、 長時間かけると疲れやすい |
その他検査結果
眼位検査 | 遠見/近見正位 |
立体視(cc) | なし |
立体視(JB) | なし |
眼底 | 正常 |
処方の経緯
眼鏡処方値(再掲) | R (0.4× -2.75D) L (0.8× -2.25D) |
完全矯正よりだいぶ弱いJBですら
長時間かけられない(かけたくない)
とのことで、薄暗い映画館でギリギリ
字幕が見える度数を設定。
映画を見る用であれば座位のままで
済むため、ふらつきは少ないのでは
と提案した。
あとは座る席の調整をして
いただくようお話し。
考察
JBを持っているにもかかわらず
使用していない場合は理由がある。
その理由を聞き、目的達成のために
許容できる範囲まで度数のすり合わせを
することが大事。
左右差を残す例
50代女性 | 右眼軸長24㎜ 左眼軸長26㎜ |
完全矯正値 | R (1.2× -3.00D) L (1.0× -6.00D) |
使用眼鏡度数 | R (0.8×JB -2.50D) L (0.2×JB –3.00D) |
眼鏡処方度数 | R (0.9× -2.75D) L (0.2× -3.00D) |
主訴
- JBよりもう少し遠くが見えるようになりたい
状況
- JBは数年前に作製
- 経理の仕事
- 読書が趣味
- 運転はしない
- 裸眼で近くを見ることもある
問診
何を見る時に困っている? | 駅の案内板が もうちょっと見やすくなりたい |
JBの使い方は? | 眼鏡には左右差があり(意図的ではない)、 近くを見るときも外さずに済むので楽 |
その他検査結果
眼位検査 | 遠見XT R-fix 近見Xp’~Xp(T)’ |
立体視(cc) | TST Fly(+) supp.L(やや薄い) animal3/3 circle7/9 |
立体視(JB) | TST Fly(-) supp.R animal0/3 circle0/9 |
眼底 | 正常 |
処方の経緯
眼鏡処方値(再掲) | R (0.9× -2.75D) L (0.2× -3.00D) |
立体視 | circle0/9 |
今のJBの不満点は「遠くがもう少し見たい」
という点のみで、近見視は不自由していない。
意図的ではないにしろJBに左右差があり
結果的にモノビジョンとして使用している。
遠見時には単眼視しているため
左眼の度数を上げる理由がない。
(上げてしまうとモノビジョンが消失する)
よって、左眼度数はそのままにし、
自覚的に遠見が「ちょっと」
見やすくなる度数で処方した。
本症例は「意図せずモノビジョン」になっているので、本人から「モノビジョンにしたい」と言ってくることはありません
ヒアリングをする中で気づいて、こちらから提案する必要があるんですね!
考察
「何を見るときに困っているか」を聞き出し、
JBの問題点と問題ではない点を分ける
ことで、より満足度の高い眼鏡に仕上がる。
なお矯正時の近見立体視が良好なのは、
裸眼で近くを見ることがあるためと思われる。
左右差が2Dを超えてもいい例
40代男性 | 右眼軸長25㎜ 左眼軸長28㎜ |
完全矯正値 | R (1.2× -5.00D) L (1.2× -9.00D) |
使用眼鏡度数 | R (1.0×JB -4.50D) L (0.3×JB -6.50D) |
眼鏡処方度数 | R (1.0× -4.50D) L (0.9× -8.50D) |
主訴
- 眼鏡を変えてから目が疲れる
状況
- JBは数か月前に作製した
- 以前のJBが古くなったため
- 古いJBは持参なし
- パソコンも多いが運転もする
問診
JBの右眼の見え方はどうか? | 問題なし、よく見える(遠見・近見とも) |
JBの左眼の見え方はどうか? | ぼやけて見えない(遠見) |
古いJBで同じことはあったか? | ここまで見づらいことはなかった |
眼鏡店で相談したか? | 相談した 「左眼度数をこれ以上上げられないので 慣れの問題」と言われた |
その他検査結果
眼位検査 | 遠見ortho 近見Xp’ |
立体視(cc) | TST Fly(+) supp.(-) animal3/3 circle7/9 |
立体視(JB) | TST Fly(+) supp.(-) animal3/3 circle5/9 |
眼底 | 正常 |
処方の経緯
眼鏡処方値(再掲) | R (1.0× -4.50D) L (0.9× -8.50D) |
立体視 | circle7/9 |
左右差を2D以内に抑えることを
優先した眼鏡処方だったため、
左眼の視力が上がらず、両眼視が
できなくなったことで眼精疲労が
起きたのではないか。
持参していないが、以前の古いJB
では同じ症状がなかったとのこと
で、もともと左右差をつけた眼鏡を
装用していた可能性がある。
試しに両眼視(立体視)を優先して
装用テストを行ったところ、
との回答を得られた。
この患者さんには年齢的に老視の話もし、今後は累進か老眼鏡が必要である旨をお伝えしています
考察
屈折差があっても左右眼しっかり
矯正することでかえって両眼視機能
が上昇した例。
「これ以上度数を上げられない」
というのは理屈上の思い込みに過ぎず、
これまで左右差のあるJBを装用していた
人には、2D以上の差があったとしても
処方を検討する余地がある。
まとめ
「不同視=不等像視ではない」という
ことを念頭に、患者さんの人生を振り
返り、これまでの見え方に基づいた処方
をすれば成功率が上がります。
何より大事なのは、患者さんからのフィードバック。
改良点が分かれば次回に活かせます。
処方した眼鏡の使い心地はどうなのか、
ご本人が何も言わなくても次の受診時に
聞いてみて下さいね!