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白内障手術後は一律Add+3.00Dしていいの?
若くて片眼だけの場合、どうアプローチしていいの?
白内障手術後の累進眼鏡処方は
一般的な処方と違い、若い方や
片眼のみの方も対象となります。
実際の処方例や注意点などを解説します。
なお、処方値はほんの一例に過ぎず、
「この数値が正解である」というわけ
ではありません。
処方は患者さんによって異なる
という大前提はご留意下さい。
白内障手術後ならではの累進処方の注意点がわかる
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白内障手術後の累進眼鏡処方では、
年齢やこれまでのJBがどうだったのか、
術眼は両眼かなどに着目します。
30~40代で片眼の白内障手術後には
の3つのパターンがあります。
単焦点の場合は近方の見づらさを説明
した上で行い、慣れられそうになければ
累進レンズを処方することになります。
片眼手術
慣れやすくするために、非オペ眼を単焦点ではなく弱加入の累進レンズにすることもあります
片眼だけ調節力がゼロになるため、
左右眼で単焦点と累進、あるいは
加入の違う別々のレンズを処方
することになります。
加入はAdd+1.75D前後から試し、
遠見近見の見え方を確認、左右眼での
違和感が少ない度数で決定します。
若く、適応力も高いため、場合によっては
「慣れてきたのでもっと度数を強めたい」
ということもあります。
眼鏡処方箋には
右/左眼白内障手術後のため、
・片眼のみ累進レンズ
・左右で加入が異なる
などと記載し、眼鏡店との連携を
はかって下さい。
両眼手術
「初累進=強い加入度数」
ということになるので、
両方を考慮しながらの処方が必要です。
累進にしたい、累進にしなければならない
といった理由があるはずなので、どこまで
用途にかなった処方ができるか、
ヒアリングと装用テストをしっかり
行なって下さい。
片眼のみ手術 これまでのJBは累進
すでに累進のJBを使用していた場合
が生じます。
患者さんにはその理由
(片眼はIOL、片眼は調節力が残っている)
を説明し、装用テストに十分な時間を
かけて大丈夫か確かめます。
眼鏡処方箋には
右眼白内障術後により加入度数が異なります
など別途コメントを残し、眼鏡店に
誤解や不安を与えないようにして下さい。
両眼手術 これまでのJBは累進レンズ
これまでのJBが累進レンズだったとしても、
加入の弱い(Add+1.00~1.50)累進眼鏡では
ないか確認して下さい。
特に初めての累進眼鏡で、実年齢以上に
加入が弱く作られている場合は、
累進の経験はあれど強い加入には慣れていない
ということを念頭に処方をします。
場合によっては単焦点眼鏡の処方に
なることもあります。
片眼/両眼手術 これまでのJBは単焦点
原則、これまで単焦点だった方に
累進を積極的にすすめることはありません。
しかし累進に興味がある方も多いので、
「試しに」Add+2.50くらいのテストレンズを
かけてもらい、累進の使い方、危険性も
含めて体験してもらうのも良いと思います。
この方が「やっぱり累進はやめよう」と納得
しやすいし、「いや、これならできそうだ」と
意欲的になるケースもゼロではないからです。
最初から無理と決めつけて、QOVLの向上に制限をかけるのは控えましょう
60代の累進眼鏡処方は、これまで累進の
JBを使用していれば、さほど問題なく
度数の決定が可能です。
ただし、50代同様、今まで極端に
弱い加入のJBだった場合は注意が必要です。
単焦点しか使用していなかった場合は、
年齢的にも加入度数的にも適応が
難しいことが考えられるため、
累進をすすめないケースが多いです。
本人がすんなり納得するようなら無理に
試すことはありませんが、累進に未練が
ありそうなら、注意点や使い方の説明を
して一度試してみるのもいいでしょう。
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理論通りにはいかない、
実際にあった処方例を紹介します。
年齢 | 40代 |
術眼 | 両眼IOL挿入眼 |
術前の屈折 | R (0.7×S-12.00D=C-2.00 A180) L (0.6×S-12.00D=C-2.00 A180) |
術前のJB | R S‐11.50D C-1.00 A180 L S‐11.50D C-1.00 A180 |
術後の完全矯正値 | R (1.2×IOL S-2.75=C-1.00 A180) L (1.2×IOL S-3.00=C-0.75 A180) |
眼鏡処方度数 | R S-2.75=C-0.75 A180/Add+2.50 L S-3.00=C-0.50 A180/Add+2.50 |
経緯
これまで単焦点の経験しかなかった方でも、
+2.50D加入の累進眼鏡の適応になったケース。
当初は単焦点の処方だったが、仕事で
パソコンも使う都合上、累進を希望された。
装用テストしてみて
「少し違和感はある」
「でも、こんな程度だったら大丈夫そう」
と累進レンズへの反応が
良かったことから処方にいたった。
考察
なぜいきなり強い加入でも
大丈夫だったのか?
などが考えられる。
年齢 | 70代 |
術眼 | 両眼IOL挿入眼 |
術前の屈折 | R (0.3×S+4.00D) L (0.4×S+4.00D) |
術前のJB | R +3.00D /Add+3.00 L +3.00D /Add+3.00 |
術後の完全矯正値 | R (1.0×IOL -1.25D) L (1.0×IOL -1.50D) |
眼鏡処方度数 | R (0.8×JB S–0.75/Add+2.00) L (0.8×JB S–1.00/Add+2.00) |
再処方度数 | R (0.8×JB S–0.75) L (0.8×JB S–1.00) |
IOLターゲット
強度乱視眼でIOLターゲットを近視寄りに
した症例。事前に注意点は説明しており
「遠くも近くも裸眼でそこそこ見たい」
という強い希望があり、設定。
処方の経緯
原因の検討
結果
考察
事前に説明した内容を必ずカルテに記載して下さい。
あとあとのトラブルを避けるためです
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白内障手術後の累進眼鏡処方で
注意したい点は次の3つです。
術後に近視度数が‐3.00D以下になった
場合、加入度数によっては近見が
プラス度数になります。
例
術前の屈折度数 | S ×IOL -6.00D |
術後の屈折度数 | S ×IOL -2.50D |
術後の眼鏡度数 | S ×JB -2.50D/Add+3.00 |
上記の場合、近用部の屈折が+0.50Dとなり、
これまで凹レンズの見え方に慣れていた
人にとって、
凸レンズの膨張効果に違和感を覚える人も多い
です。
装用テストによく説明して下さい
JBのレンズがカラー染色されている場合、
高確率で眼鏡店で断られます。
理由は左右で色味が変わって
しまうためです。
詳しくは『白内障術後の単焦点眼鏡処方』をご覧下さい。
片眼のみ累進レンズを交換する場合、
快適な使い勝手になるかは眼鏡店に
よるところも大きくなります。
累進レンズの基本設計は、
メーカー・レンズの種類によって
設計が細かく異なります。
以上が眼鏡店の必須条件です。
同じレンズを扱っていない眼鏡店へ
眼鏡処方箋を持ち込んだ場合も
おそらく断られます。
対処法
事情を説明し、処方箋上では両眼交換
できるよう記載しておくのがベストです。
処方箋には
白内障手術後につき〇眼のみレンズ交換
ご本人様とご相談をお願いします
といった文言を添えて下さい。
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このように、症例ごとでも処方度数の
決定には色々な要素がからんできます。
経験を積んで情報を蓄積するほど、
問題に突き当たったときの
「手持ちのカード」が多くなり、
最適な眼鏡を処方するための
選択肢が増えるのです。
「なぜこのケースはダメで、
なぜこのケースでは大丈夫だったんだろう?」
と常に考えながら眼鏡処方を行ない、
ひきだしの多い視能訓練士を目指して下さい!
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