【指数弁・手動弁・光覚弁】0.01以下の視力検査のやり方をやさしく解説!
「0.01以下の視力測定は、あまり経験がないので自信がない」
「指数弁、手動弁、光覚弁の検査結果が、自分と他の検査員で全く異なってしまう」
視力が0.01以下の場合、指数弁、手動弁、
光覚弁を用いて視力検査を行ないます。
「やり方だけは養成校で習ったが、患者
さんに対する経験が少なくて自信がない」
という新人視能訓練士も多いかもしれま
せん。
指数弁、手動弁、光覚弁で信頼性の高い
結果を得るために、適切なやり方や検査
時の声かけ、注意点などを詳しく解説し
ます。
視力0.01以下(指数弁・手動弁・光覚)の検査で重要なこと
指数弁、手動弁、光覚弁の検査を
行なうにあたり、まず知っておき
たいポイントを説明します。
①必ず検査前にカルテを確認!
検査前には最低限、以下の3点を必ず
確認して下さい。
- 疾患名や眼の状態(なぜ0.01以下の視力なのか)
- 前回の視力値
- 眼底写真や視野検査などの結果
以上を把握することで、遮蔽や視標
(手や指、光など)の提示方法など、
検査における注意点がより明確に
なります。
- 前回値が手動弁や指数弁だったからといって、今回も同じとは限りません!
硝子体出血や手術前後など症例に
よっては、「前回は手動弁だったが、
今回は0.1指標が見える」ということ
もあります。
カルテで得た情報をもとに「なぜ指数弁、手動弁だったのか」を考えながら検査を行なうことが大切です
②遮蔽はしっかり!
指数弁、手動弁、光覚弁の検査では
片眼遮蔽がとても重要です。
遮蔽のポイント
- 非検査眼を直接ガーゼやティッシュで覆い、すき間がないように押さえます。
患者さんの手で覆ってもらうと無意識
にずれることがあるため、できるだけ
検査員の手で覆うのが望ましいです。
- 「非検査眼に遮蔽版を入れた検眼枠を装用させるだけ」という通常のやり方は絶対に避けて下さい。
検眼枠の隙間から非検査眼で見えて
しまう、検眼枠が邪魔して手や指の
動きが見えない、といった可能性が
あるためです。
③残存視野の中に視標を出す
緑内障、網膜色素変性症、末期の糖尿病
網膜症など、ところどころにしか視野が
残っていない症例では、必ず視野の中に
指標を出すようにして下さい。
残存視野に指標を出すポイント
- GPがあれば必ず参照し、GPがなければ周辺視野まで反応がないか探す
上図のような前回のGP結果にて、耳側
だけわずかに視野が残っている場合、
右眼の耳側下方にゆっくり指標を出し
ます。
視線がきょろきょろすると残存視野が動いて探せなくなるため、視線はなるべく正面を向いたままにして下さい
指数弁の検査方法
指数弁のやり方
- 目の前に指を出し、指の本数がわかるかどうかを確認(わからなければ手動弁へ)
- 眼前10㎝に指を出し、正答するごとに10cmずつ遠ざけて確認していく
- 眼前50㎝に指を出し、徐々に近づけて、判別できた距離を記載しても良い
- 最低でも2回以上、本数がわかれば正答とする
指数弁50cmがスムーズに正答できた
場合は0.01がわかるかどうかも確認
して下さい。
施設によっても異なりますが、基本的
に指数弁は50cmまでとし、それ以上の
距離では行ないません。
指数弁の記載例
指の本数が判別できた距離を記載する
- 眼前30cm、右方に提示して指の本数がわかった
→ c.f/30cm(右方で反応あり)
※n.dと記載することもある
指数弁の声かけ
※指を出していないにもかかわらず「○本」と答える場合、回答の信頼性が低いと判断できる。
カルテに、
指を出していない時も回答があった
などと記載しておく。
指数弁の注意点
指は基本的に動かさず止まった状態で
提示しますが、残存視野を狙う場合、
視野の中に入るまではゆっくりと指を
動かしていきます。
視野検査や眼底写真の結果を見て、
視野が残っていそうな場所を予測
して下さい。
手動弁の検査方法
手動弁のやり方
- 目の前で手の平を動かし、動きがわかるかどうかを確認する(わからなければ光覚弁へ)
- 眼前10㎝に手を出し、縦横に動かす
- 応答があったら距離を10cmごとに遠ざけて確認していく
手動弁50cmがスムーズに正答できた場合
指数弁がわかるかどうかも確認してみる
施設によって異なりますが、基本的に
手動弁は50cmまでとし、それ以上の
距離では行ないません。
手を動かす方向は水平方向ですが、
前回値に「斜めのみ正答」などと
記載がある場合は、確認しても良い
でしょう。
手動弁の記載例
手の動きが判別できた距離を記載する
- 眼前10cm、左下方、斜めの手の動きが分かった
→ h.m/10cm(左下方に呈示、斜めに動かして)
※m.mと記載することもある
なお、50cmで動きが分からず、40cm
まで近づけて分かった場合はh.m/40cm
となります。
手動弁の声かけ
※手を動かしている時、止めている時で
声のトーンや話し方などに差が出ない
ように意識する
手動弁の注意点
手を動かす場所は正面だけではなく、
症例に応じて視野が残っている場所を
意識して下さい。
また手の動きのスピードは「バイバイ」
と手を振るよりもゆっくり、早すぎない
ようにします。
手を動かすスピードが早いとわずかに
風が起こるため、それで動きの有無が
判断できてしまう場合もあります。
光覚弁の検査方法
光覚弁のやり方
- 非検査眼をガーゼ(ティッシュ)で光が入らないように完全に遮蔽する
- 眼前約10cmくらいから、ペンライトで光を当てる
- 光の有無が判別できるか確認する
- 明室で反応がなければ完全暗室にて再度確認する
※光覚弁の記載例
→ s.l(+):光覚あり(暗室/明室にて)
→ s.l(-):光覚なし(暗室/明室にて)
→ s.l(±):光覚があるかないか判断しがたい
※lsと記載することもある
光覚弁の声かけ
光覚弁の注意点
光覚の有無は慎重に判断する必要が
あります。
- 特に「これまで光覚(+)だったのに、急に(-)や(±)になった」という場合は、明室・暗室両方での確認して下さい。
その後、「診察室にて光覚の確認を
お願いします」と医師に申し送りして
下さい。
また、一定のパターンで光らせると、
患者さんの「見える」という回答が
たまたま当たってしまうこともあり
ます。
- 「今から光を出しますね」と言って、光を出さずに「いかがですか?」と聞く方法もあります。
視力0.01以下の検査方法 まとめ
指数弁、手動弁、光覚弁はシンプルな
検査ですが、やり方や検査状況が結果に
大きく影響します。
特に重要なのは、片眼遮蔽をしっかり
すること、残存視野を意識すること
です。
「検査員によって結果が変わる」と
なっては、診察にも支障が出てしまい
ます。
なぜ指数弁、手動弁、光覚弁になって
いるのか、症例に応じてどのような点に
注意して検査すべきか、常に考えながら
検査することが重要です。