注意すべきオートレフ値の読み方と視力検査の4つのポイント
オートレフ値はたまに数値がばらつくけど、なんでだろう?
こんな時の視力検査のコツって何があるだろう??
オートレフ(以下、レフ)の精度は優れて
いるものの、レフの数字がばらつくことは
よくあります。
レフの数値を読み間違えたり、あやしい
レフを頭から信用したりするといつまで
経っても視力検査が終わりません。
視力検査に慣れていない新人視能訓練士
や眼科看護師に向けて、どんなレフ値に
注意すべきで、その原因は何か、視力検査
をする際のポイントも併せて解説します。
この記事を書いた人
- 視能訓練士歴10年目
- 小児・硝子体・眼鏡処方が得意
注意すべきオートレフケラト値の要点
注意すべきレフかどうかを判断する
要点は以下の通りです。
①S、C、Aに極端なばらつきがある
- 1段階(0.25ステップ)程度のばらつきではなく、数値が極端に飛ぶ
- 平均値を信用できない
- どの数値も安定しない
②信頼係数が低い
- 本機種では「9」が最高のため「5」「6」はかなり低い
※機種により表示が異なる
③角膜曲率半径が正常範囲から大きく外れている
- 正常範囲の7.60~8.10mmを大きく超えている
- 何もせずここまで数値が大きくなることはないので原因を考える(後述)
④瞳孔間距離(PD)が極端に広い/狭い
- PDの平均は約58mm~66mm
- PDが極端に広い/狭い場合は外見と合っているか確認する
- 左⇔右眼の測定の最中に一回顔を外してしまうと極端な誤差が出やすい
①③④はレフの測定中にモニターに表示されるので、レフの用紙がプリントアウトされる前に気づけます
注意すべきレフ値(屈折度数)の原因
レフ値がばらついたり、信用できない
結果になってしまったりするのには必ず
原因があります。
やむを得ない理由、検査側の不注意に
よる理由などいくつかあるため、次に
挙げる要素はすべて覚えて下さい。
眼疾患
レフ値がばらつく眼疾患の一例
- 涙液疾患(ドライアイなど)
- 角膜疾患(翼状片、角膜変性など)
- 白内障(特に核白内障など)
- 硝子体疾患(硝子体混濁、硝子体出血など)
以上のような眼に入る光の通り道を
阻害する眼疾患があると、レフの
測定光が影響を受け、レフ値がばら
つきます。
固視不良
レフ値がばらつく固視不良の一例
- 視力が悪く固視できない
- 集中力がなく固視できない
- 検査の理解力がなく固視できない
- じっとしていられない
- 頭位の固定が難しい
- 測定の瞬間動いてしまう
高齢者、小児、視覚障がい者などは
まっすぐ一点を見続けられないこと
があり、数値のばらつきの原因となり
ます。
調節の影響
レフ値がばらつく調節*が入りやすい一例
- 小児である
- 遠視である(大人も含む)
- 近見作業が長い(受験勉強やスマートフォンなど)
調節の介入は年齢が若いほど影響を
受けやすく、老眼世代(50代以降)
ではほとんど起こりません。
*調節とはピント合わせの力のこと。調節の影響によりレフ値はマイナス寄りに出る
眼瞼挙上が足りない
レフ値がばらつく眼瞼の一例
- 眼瞼下垂がある
- 睫毛が下向きに生えている
- 睫毛が長い
- 眼瞼内反があり下眼瞼の睫毛が角膜をこすっている
眼瞼挙上が足りないと睫毛がレフの
測定範囲にかかり、数値が乱れます。
必要に応じて上眼瞼だけでなく下眼瞼
も下に引っぱり、睫毛の影響がないよう
に工夫をして下さい。
注意すべきケラト値(角膜曲率半径)の原因
ケラト値が大きく出る最も多い理由は
- コンタクトレンズを装用したままレフを測っていた
- レーシック後だった
- 眼疾患、眼外傷の影響がある
などが挙げられます。
コンタクトレンズを装用していた
ソフトコンタクトレンズ(SCL)を
装用したままレフを測ると、
SCLのベースカーブに影響されてケラト値がかなり大きく出ます。
ハードは角膜の上で動くので測定中に
気づきやすいですが、SCLは見過ごされ
ることが多いです。
大きなケラト値が出たらSCL装用していないか問診表や本人に確認して下さい
レーシック後だった
レーシックは角膜を平らに削る治療なので、ケラト値は大きくなります。
レーシック後の眼は視力検査にも影響
するので、カルテに記載するか視力検査
スタッフと共有して下さい。
ただし、もとの屈折度数によっては
レーシック後であってもケラトが正常
範囲内の人もいます。
眼疾患・眼外傷があった
ケラト値が極端に大きい/小さい原因には、小眼球や外傷が原因の可能性があります。
小眼球など先天的な疾患を持つ人は
すでに眼科を経験しており、問診票
にも記載されているはずなので必ず
確認して下さい。
注意すべきレフ値の視力検査のポイント
①前回値を参考にする
再診の場合は前回の値が残っているはず
なので、まずは前回値を検眼レンズで
作ります。
極端にばらつく レフ値 | S -2.25 -5.25 -4.00 <-2.25> |
前回値 | S-1.75D |
最初の検眼レンズの 選択し視力検査する | S-1.75D |
S0.25Dステップ | ①回答の反応が早ければS-2.00D |
S0.50~1.00Dステップ | ②視力が出にくければS-2.75D |
②使用している眼鏡度数を参考にする
使用眼鏡(JB)の度数は、レフ値が
信用できない時には選択するレンズ
の目安として大いに参考になります。
極端にばらつく レフ値 | S -2.25 -5.25 -4.00 <-2.25> |
JB度数 | S-1.50D |
最初に選択する 検眼レンズ | S-2.00Dあたり |
JBを見ると、
- 少なくとも、もともと強度近視ではなさそう
- とりあえずJB度数に近いS-2.00Dあたりからレンズを入れてみようか
という参考になります。
それでも「結果的にS-5.00D入れないと視力が出ない」ということはあります
③検眼レンズは細かく刻まない
レフ値が極端にばらつく場合は、
- レンズ(球面度数)の交換を0.25Dずつではなく、0.50~1.00Dずつくらい飛ばして行ないます。
極端にばらつく レフ値 | S -2.25 -5.25 -4.00 <-2.25> |
0.25Dずつだと 非効率! | S-2.25D ↓ S-2.50D ↓ S-2.75D |
0.50ずつ上げて 視力を確認する | S-2.25D ↓ S-2.75D ↓ S-3.25D |
視力が出にくい時は0.25Dずつでは
反応が変わらないことが多く、時間
がかかるので非効率です。
レフ値が多少ばらつく程度であれば通常通りの検査方法で行ない、視力が出にくければ0.50Dステップにしてみます
④正確性は求めなくてOK
レフ値が極端にばらつくときは
- 「度が合っているか過矯正でないか」については、そこまで気にしなくてOKです。
カルテに視力が出にくい旨を記載すれば
大丈夫です。
医師が知りたいのは「視力がどこまで
出るか」であり、
- どれだけ度数を入れても視力が出ないのか
- 過矯正にすれば視力は何とか出るのか
- 眼所見と視力値に相関性はあるのか
なのです。
この場合、検眼の精度はそれほど求めら
れていないので、検査に時間をとられない
ようにします。
視力が出にくく検査に自信が持てない場合は、早い段階で視能訓練士に声をかけて下さい
まとめ
視力検査に慣れてくると、あやしい
レフ値の検査をすることになります。
ひとまず、
- レフ値がばらついていることに気づく
- 既往歴を確認する
- 難しいと思ったらすぐ視能訓練士に相談する
上記を意識し、視力検査に取り組んで下さい。