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トラブルになりにくい眼内レンズのターゲット選定とヒアリングのポイント

視能訓練士

眼内レンズ(IOL)のターゲット選びって、正視にするべきか近視を残すべきか、迷うこと多すぎ…!!

何かヒントになることはないかな?

白内障の手術後の見え方は、網膜疾患
など他の病気の有無や屈折ターゲット、
IOL検査、算式、手術により決まります。

この記事では、屈折ターゲットを決める
上で必要な「事前のヒアリングと説明」
について具体的にお話しします。

この記事を書いた人

  • 視能訓練士歴14年
  • IOL検査・GP・ロービジョンが好き

※本記事は単焦点IOLレンズについての解説となります

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目次

眼内レンズの選定の基本

ヒアリングがトラブル防止に最も重要

ヒアリングが不十分な状態でターゲットが
決定された場合「手術しなければよかった」
などとトラブルになるかもしれません。

手術が成功しても患者さんにとってベスト
なターゲットを選択していなければ、満足
してもらえないのです。

患者さんの要求、現状への不満、術後の
願望など可能な限り細かくヒアリング

すると、深くコミュニケーションできる
ようになるため、術後のトラブルが起こり
にくくなります。

メリットとデメリットを説明

ターゲットの説明では、メリットと
デメリットをどちらもしっかり説明
します。

患者さんの中には「手術をしたら若い頃のように遠くも近くも見えるようになる」と誤解されている方もいます。

誤解はトラブルのもとになるので、

  • 正視に合わせたら遠方はよく見えるが、近方は老眼鏡がないと見づらい
  • 近視に合わせたら近方はよく見えるが、遠方は遠用眼鏡がないと見づらい

という術後の見え方のメリット・デメリット
を両方説明し、患者さんの思い込みを修正
することが大事です。

患者さんの意見に寄り添う

ヒアリングをして説明する際には、
患者さんに寄り添う姿勢も必要です。

近視の方の中には「遠くがよく見える
ようになりたい」と思っている方もおり、
「近くが見づらくなる」というデメリット
を説明しても、なかなか納得してもらえない
ことがあります。

その場合、頭ごなしに「絶対こちらがいい」
と押しつけるような説明をするのではなく、

SCLを装用して正視の状態を作り、近くの見づらさを体験し、老眼鏡をかける経験をしてもらうこともあります。

患者さんが理解していないと判断したら、
できる限り実際に近い形でデメリットも
体験
してもらい、ご本人の納得を得た上
で進めていきます。

(※この疑似体験は視力がある程度ある方にしかできません)

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眼内レンズのヒアリングで聞くべきポイント

IOLターゲット決めるヒアリングで重要
なのは、

  • 今までどんな生活を送ってきたのか
  • これからどんな生活がしたいのか

という点です。

聞くポイント

  • 眼鏡使用歴と使い方
  • コンタクトレンズ使用歴と使い方
  • 車の運転の有無
  • ふだんの生活環境

眼鏡の使用歴

まず、若い頃から現在までの眼鏡使用
歴を聞きます。

長年過ごしてきた生活スタイルを変え
ない方が、術後に違和感や不便を感じ
にくいことが多いためです。

昔から近視用眼鏡を使用しているなら、
近視を残したターゲット選定をすること
が多いです。

注意❢

若い頃は眼鏡を使用しておらず、白内障
により近視が進み、現在やむをえず眼鏡
をしているケースもあります。

その場合は、

  • 本当に近視を残す方が良いのか?
  • それとも白内障が進む前のような裸眼+老眼鏡の生活がいいのか?

など、ヒアリングし検討する必要があります。

コンタクトレンズの使用歴

コンタクトレンズ(CL)の使用歴を聞き、
術後のターゲットをどう合わせるかの判断
材料とします。

  • ハードコンタクトレンズだったのか?
  • ソフトコンタクトレンズだったのか?
  • 何年使用したのか?
  • 毎日使っているのか?
  • 近くを見るときはどうしているのか?

例えば普段はCLを使用し、近見はCLの上
から老眼鏡を使って生活している方は
「近視眼」というより「正視眼」と同じ
生活スタイル
です。

安易に近視を残すとCLの作り替えを余儀
なくされ、トラブルの原因にもなりかね
ません。

先輩視能訓練士

CL装用の状況を聞き、「術前が近視だから近視を残す」と決めつけないようにしましょう

運転免許更新の有無

免許更新のタイミングで手術を決める方
も多く、運転を裸眼でしたいのか眼鏡で
したいのか確認
します。

近視を残すと手術後早い段階で眼鏡処方
が必要になります。

近視を残すか正視にするか迷うこと
もありますが、ごく軽度の近視で
あれば、正視に合わせた方が喜ばれる
ことが多いです。

日常生活の中の作業距離

職業や趣味、スポーツなど、どこを見て
どんなことをしている時間が長い
のか
確認します。

単焦点眼内レンズの場合、どの距離でも
よく見えるわけではないので、裸眼で
見たい生活の作業範囲を把握
すること
が大切です。

例えば譜面にピントが合うようにしたい、
デスクワークが多いなど、その作業距離に
適切な屈折度数と眼内レンズ度数を選ぶ

ことが重要です。

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眼内レンズの度数選定で考慮すべきポイント

術後の屈折がずれそうな時はリスク回避を

狙った屈折ターゲットと術後「ずれて
しまう」ケースもあり、事前にその
可能性を伝えておくことを忘れない
ようにします。

  • 角膜疾患や網膜疾患により検査が正確に測れなかった
  • 平均値よりもパラメータが外れている眼球だった

以上のような場合は術後にターゲットが
ずれやすいので、あらかじめ説明しておき
「聞いてないよ」と言われないようリスク
回避
をします。

迷ったら近視を残すのが無難

近視を残すか正視にするか迷うような
症例では、近視を残した方が無難です。

万が一ターゲットがずれた場合でも、
もともと「眼鏡が必要である」という
説明をしている
ため、眼鏡の度数を
調整すればいいだけだからです。

正視を狙ってずれた場合は患者さん
の落胆度が大きくなってしまい、
トラブルの元になったり信頼性に
影響したりします。

先輩視能訓練士

特にずれが予想される場合には正視を狙うより近視を残した方がいいこともある、ということを覚えておきましょう

低視力が予測される場合は近視を残す

網膜疾患などがあり、白内障術後も
低視力が予測される時は、近視を少し
残すことで喜ばれる
場合もあります。

近視を残すと近くでピントが合い、
結果として網膜像を大きくできる
からです。

低視力者にとって、網膜像を大きく
することが「ロービジョンケア」と
なります。

患者さんの状況をよく把握しながら、
ベストは何かを提案しましょう。

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まとめ

患者さんの生活スタイル、眼鏡や
コンタクトレンズの使用歴、目の状態、
希望もそれぞれ違います。

  • 今までどんな生活を送ってきたのか
  • これからどんな生活がしたいのか

というヒアリングが、満足のいくターゲット
の選択につながります。

患者さんの満足度を高めるためにヒアリング
の技術を磨いていきましょう。

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