心因性視力障害が疑われる小児の検査前に覚えておくことを解説
心因性のお子さんって、いつもどう扱っていいかわからなくなる…
どんな心構えで対処すれば私の不安も消えるかな?
心因性視力障害が疑われる小児に
対しての視力検査では、通常とは
異なる検査手技や心構え、また
本人や保護者への配慮が必要です。
この記事では、心因性視力障害が
疑われる小児に対する視力検査の
コツや、検査に必要な心構えなどを
解説します。
- 心因性視力障害の検査で疲れにくくなる状況の見極め方と検査方法
心因性視力障害の検査前に覚えておく4つのこと
まずは、心因性視力障害の検査を
行うにあたって、知っておきたい
ことを解説します。
最も注意したいのは「心因性だろう」と決めつけることです
1.最後まで器質的疾患の可能性を忘れない
心因性視力障害は、
器質的疾患が除外されて初めて診断
がつきます。
そのため、頭部MRIなどの精密検査に
よって病気や異常が除外されるまでは、
器質的疾患の可能性を頭に入れておく
必要があります。
- 「保護者が厳しそうだから」
- 「習い事が多いから」
など、検査者が先入観で心因性だと
思い込むことは避けて下さい。
2.心因性の原因がわからないことも多い
心因性の原因や心理的ストレスの
具体例としては、以下のような
ものがあります。
- 眼鏡に対する憧れ(眼鏡願望)
- 勉強や習い事などが負担になっている
- 家庭環境や保護者との関係性
- 学校での環境や、先生・友達との関係性
しかし、
「心因性の原因がはっきりわからない」
という場合も少なくありません。
原因を探ろうとして本人や保護者に過剰な聞き取りをしたり、思い込みや先入観で検査を行ったりすることは避けて下さい
3.トリック法に反応しないことも多い
心因性視力障害の視力検査といえば
トリック法ですが、臨床ではこれらに
反応しない(視力が向上しない)症例
も多いことを理解しておいて下さい。
むしろ、
トリック法に反応してくれたらラッキー
くらいの感覚で取り組みましょう。
4. 過矯正でもいい
心因性に限らずですが、視力検査では
弱視でないことを確認したいものです。
トリック法を繰り返し、結果的にレフ値
より過矯正になったとしても、なんとか
視力が1.0出る、あるいは少しでも視力の
向上が見られれば、それで良しとします。
ただし粘り過ぎないように気をつけて下さいね
一度の検査で1.0を目指さなくても構いません
実際にあった「心因性かも?」と疑う小児の様子
実際に経験し、結果的に「心因性であろう」
と診断されたお子さんには次のようなパターン
がありました。
- レフ値がほぼゼロでも裸眼視力がほとんど上がらない
- レフ値が強い屈折異常でなくても矯正視力が上がらない
- 呼びかけにほとんど反応しない
- おとなしく大人びている(★)
- 何となく答え方がわざとらしい(★)
- すぐふざけだす(★)
※★は検査者の主観が含まれます
①~③は比較的よく見られる心因性の
反応ですが④~⑥は経験上、心因性と
診断された子どもに多かった反応です。
おとなしい子は、うなずくなど反応は
するも無口だったり、頭を下げてお礼
をするなど年齢のわりにしっかりして
いたりする印象がありました。
答え方がわざとらしい子は、妙に
テンションが高かったり、振る舞いが
嘘っぽかったりします。
もちろん検査の段階では「疑い」に過ぎず、決めつけることをしてはいけません
心因性が疑われる小児との関わり方
心因性視力障害が疑われる小児との
関わり方を解説します。
1.積極的にコミュニケーションを取る
通常の小児に対する視力検査以上に、
小児と信頼関係を築いて心を開いて
もらうことが大切です。
そのため、検査中は積極的に
コミュニケーションをとって下さい。
何気ない会話のなかで、心理的ストレス
の原因を探ることもできるかもしれません。
会話の具体例
学校に関すること
好きなもの
日常の何気ないこと
注意すべき点として、
「心理的ストレスの原因を探る」よりも
「楽しく会話する」ことを優先して下さい。
例えば学校の話題で
- 反応が悪い
- 表情が曇る
などの場合は、無理に続行せず別の
話題に切り替えた方が良いでしょう。
「この話題で表情が曇った」などをカルテに記載します
2.検査者の態度や声かけも大切
「心因性視力障害が疑われる小児だから…」
と身構え過ぎると、検査者のぎこちなさや
緊張感が小児に伝わってしまいます。
あくまでも「通常通りの態度」で堂々と
検査に臨んで下さい。
また、
声かけや小児とのコミュニケーションも
積極的に行い、淡々と検査を進めること
は避けましょう。
3.気になることは何でもカルテに残す
検査時の様子や小児の発言などで
気になることがあれば、小さなこと
でもカルテに記載して下さい。
先入観や思い込みには注意が必要
ですが、後の検査や診察において
役立つ場合もあります。
カルテ記載例
- 本人より、平日は毎日放課後に習い事があるようです
- 最近、弟が生まれたばかりだそうです
- 検査中、本人からの発言はほとんどありませんでした
まとめ
心因性視力障害と診断されるまでは
器質的疾患の可能性も常に念頭に
置いて、先入観や思い込みでの検査
は避けましょう。
トリック法で視力が出なくても、
無理に粘ったり長い時間を費やす
必要はありません。
「視力が出なかった」「トリック法に
反応しなかった」という結果として
受け止め、カルテに残して下さい。