【眼鏡処方前・新患・再診】JBチェックで見るべき4つのポイント
患者さんの使用眼鏡(JB)を預かったら、
眼鏡の状態を目視とレンズメーターで
確認します。
JBは患者さんの性格や生活状況、
作製時の眼の状態などいろいろな
情報が満載です。
どうしてこのようなJBの状態・度数に
なったのか、今日の検査結果次第で
どう提案すればいいのかという
参考にしていただければ幸いです。
この記事を書いた人
- 視能訓練士歴9年
- 斜弱、眼鏡処方、GPが得意
- JBから情報を探す方法
- オートレンズメーターの弱点
JBチェックで見るべきポイント
JBをチェックする際には
- フレームの状態はどうか
- レンズの状態はどうか
- 度数やPDのズレはないか
- プリズムが入っているかどうか
の4点を確認して下さい。
フレームの状態はどうか
視能訓練士の手に余ることも多々ある
ため、フレームの状態によっては
眼鏡店との連携が重要です。
よくあるのは次のような
フィッティングに問題がある例です。
- フレームがずり落ちている
- フレームが傾いている
- ツーポイントネジがゆるい
- そり角がついている(※)
- レンズの傾斜がおかしい
(※)そり角とは眼鏡を真上から見たときに、フロント部分のカーブが顔面に対し逆にそっていること
明らかに歪んでいる時は「踏んでしまった」
など外的な要因がありますが、普通に
使っていてもネジのゆるみやずり落ちは
起こります。
とくに累進レンズではフィッティングが
かなり重要になるため、フレームの
歪みがあるならすぐに眼鏡店で
直してもらうよう伝えて下さい。
「度が合っているのに見づらい」
のがフィッティングに問題がある
場合、眼鏡処方にはならないこと
があります。
レンズの状態はどうか
JBレンズの状態を確認し、
より良い扱い方を提案します。
新患や再診でJBチェックだけ行なう
なら、さらっと
と声をかけるだけでかまいません。
眼鏡処方を希望しているなら、少しでも
視力に影響しないよう、長く使えるよう
にアドバイスします。
プラスチックレンズの傷みは、
熱、傷によるコーティングはがれ
が多いです。
※画像はすべて東海光学株式会社より許可を得て出典
傷防止対策
- そのまま胸ポケットへ入れない
- 服のすそやタオルで拭かない
- レンズを下向きにして眼鏡を置かない
プラスチックレンズはコーティング技術
の向上によってかなり傷に強くなりました。
それでも不用意な扱いで傷がつき
やすく、コーティング剥がれに
つながります。
他にもありますが、上記のことを注意点として説明して下さい
熱防止対策
- 車に置きっぱなしにしない
- 眼鏡をお湯で洗わない
- ドライヤーを使うときは外す
熱によるダメージは日常生活でよくある
ことですが、意外と知られていないこと
もあります。
調理中の熱はやむを得ないところもある
ので熱による注意だけうながすように
して下さい。
度数やPDは合っているか
レンズメーターで度数やPDが
合っているかを確認します。
特に注意したいのは以下の2点です。
- プリズムが入っていないか
- 加入度数がきちんと入っているか
単焦点を測定する場合は、レンズの
光学中心と患者さんのPDがおよそ
合っているか気にして下さい。
度数を測っていて、「ずいぶんレンズの
測定ポイントが内寄り(外寄り)だな」
と思ったら、プリズムが入っていること
を疑います。
患者さんのPDに対し、
- ただPDが狭い(広い)だけだった→普通の単焦点
- PDは普通だった→プリズムが入っている
ということがわかります。
累進レンズを測定する際には、
隠しマークの加入度数が本当に入っているか
確認して下さい。
- フレームの縦幅が狭さ
- 遠用アイポイントが低い
- 累進帯が長い
といった理由から、
加工する際にレンズ下方の近用部分がだいぶカットされている
ことがあります。
それで患者さんが満足していれば問題
ありませんが、もし「手元が見えにくい」
という訴えがあるなら、近用部の
狭さが原因とも考えられます。
プリズムが入っていないか
プリズムが入っているJBは
PDとレンズの光学中心が一致していません。
JBにプリズムが入っている理由として、
- 現在斜視がある
- 作製時に斜視があった
- レンズの加工ミス
- レンズの処方ミス(PD間違い)
といったことが考えられます。
どうやらプリズムが入っていることが
わかった場合、斜視検査が追加になる
可能性があります。
患者さん本人が作製時の様子を覚えて
いるなら、プリズムを入れた記憶が
あるか伺ってみます。
斜視検査をしてみてこれといった
斜視が検出されなかった場合は、
- 作製時に斜視がありプリズムを入れた
- レンズの加工や処方でPDずれを起こしている
という可能性もあります。
いずれにしても、今現在、斜視がない
のであればプリズム入りの眼鏡を
使うことは適切ではありません。
本人の自覚も聞きつつ、困っているようであれば眼鏡の処方をして下さい
オートレンズメーターでわかりにくいこと
大前提として、写真(↑)のように必ず眼鏡を固定して下さい!
オートレンズメーターの精度が上がって
きているとは言え、100%信用するのは
危険です。
細かい収差(度のズレ)まで自動で
拾ってしまうため、微妙に違う度数を
検出してしまうこともあるのです。
累進レンズは特に注意!
累進レンズのプリズム測定
プリズム入り累進レンズの度数を
測るのはなかなか難しいものです。
『光学・眼鏡(医学書院)』によると、
「プリズム測定位置はレンズによって異なる」
ようですが、
プリズムは左右の隠しマークの中心で測ればよいです。
(下図、中央の十字)
出典:『光学・眼鏡』(医学書院)引用:p.223
本当にプリズムが入っているかの
手がかりとしては、
- 左右のレンズでBI/BO、BU/BDの整合性があるか
- 本人に「プリズムを入れるという話はありましたか」と聞く
などがあります。
特にBI/BO、BU/BDの整合性は大事で、
左右ともBDプリズムが検出されたらそれはプリズムではない
と判断できます。
強度近視眼の累進レンズ
-10Dほどの強いマイナスレンズだと、
レンズを上下に振っても累進レンズか
どうかわかりにくいです。
強度レンズ特有の歪みが、
累進の歪みと区別しにくいのです。
実際、レンズメーターで測っても、
S-10.00D Add+1.50だと単焦点として
認識されてしまうことがあります。
強度乱視も加わるとさらにわかりづらい
ため、40代以上の強度近視眼鏡を
預かったら、累進かどうか最初から
隠しマークを探した方がいいでしょう。
オートレンズメーターで累進やプリズムを測るときは、多少の誤差は想定して下さい
まとめ
「JB度数を測って終わり」ではなく、
細かい点を読み取り、新しく処方する
度数にどう生かしていくか。
JBからいかに多くの情報を得られるか
によって、処方する度数の制度が
変わり、結果として患者さんの
満足度にも影響します。
考えながらJBチェックを行えば、「考えない人」との差がつきますよ!