【赤緑試験の使い方・眼鏡店の選び方・運転免許の眼鏡処方】の注意点
眼鏡処方は単なる度数の合わせ直し
だけではなく、それ以前にもヒアリ
ングや扱い方の指導が大切です。
本記事では眼鏡処方にあたり、知って
おきたいそのほかの知識を共有します。
「眼鏡処方は手探りでやっている」
という方の参考になればと思います。
本記事の内容も個人による考え方の
差があり、ここに書かれていない
やり方を否定するものではありません。
- 赤緑試験の使い方
- 眼鏡店の選び方
- 運転免許の眼鏡処方
この記事を書いた人
- 視能訓練士歴9年
- 斜弱・眼鏡処方・GPが得意
赤緑試験の信頼度
赤緑試験(レッドグリーンテスト)は
過矯正・低矯正を調べるものですが、
調節力の影響をもろに受けます。
赤緑試験の信頼度は
- 調節力が弱くなるほど信頼度が上がる
- 調節力が強い世代では信頼度が下がる
というのが結論です。
赤緑試験に時間をかけてはいけない
近視であれば
最高視力最弱度数が決定した時点で、ちょっとした確認程度
に赤緑試験を行ないます。
本来であれば低矯正の弱い度数から
こまめに赤緑を見せていき、過矯正(緑)
にならないところで止めるというのが
正確です。
しかし忙しい外来で、レンズを交換する
たびに赤緑を見せるのは効率がいいとは
言えません。
完全矯正値に過矯正の疑いがないようなら赤緑試験をスキップしてもかまいません
「緑」の回答があったら行なうこと
赤緑試験で「緑」と回答があったら、
次のように考えます。
調節力がない(弱い)世代
- 50代以降
- 過矯正を疑い、+0.25Dして見え方の確認をする
- 弱めた方が見やすいなら弱める
調節力が強い世代
- 30代以下
- 過矯正または調節力が介入している疑い
- +0.25Dして見え方の確認をする
- 視力が下がるようなら度数は弱めず、カルテに「R<G」などと記載
眼鏡処方の際、視力があまりに落ちるようなら、回答が緑であっても処方することがある
ただし仮性近視で調節力が不安定な場合は、赤緑試験の結果に関わらず弱い度数で処方します
赤緑試験の過信は危険です。
赤緑の回答だけに振り回されて、時間と
体力を消耗しないようにして下さい。
眼鏡店の選び方
眼科で提携している眼鏡店があれば問題に
ならないことですが、
- 「提携している眼鏡店がない」
- 「違うところで作りたい」
といった場合に参考にして下さい。
【眼鏡店の価格帯】 | 【特徴】 | 【予算】 (※)あくまで目安 | 【技術・質】 |
低価格帯 | とにかく安い 薄利多売 | 5千~1万5千円 | 低 |
中価格帯 | 従来のチェーン店 新人からベテランまで | 1万5千円~ | 中~高 |
高価格帯 | 高級店 信頼度は高め | 2万円~ | 高 |
低価格帯
スリープライスショップ(3プラ)など
とも呼ばれている、超低価格の眼鏡店です。
現在は3プラチェーン店以外にも
セット価格で5千円程度の眼鏡店も
増えてきました。
安さの理由はそれだけ数を売るから
なので、一人一人の接客や検査に
しっかり時間をかけることができません。
- 経済的に眼鏡への予算がかけられない人
- 予備の眼鏡がほしい人
- コンタクトレンズがメインの人
などにご案内します。
中価格帯
従来のチェーン店などが中価格帯で、
3プラ店が増えたためか、以前より
最低価格が低くなっています。
価格帯も幅広く、安いものから
ブランド品まで取り扱っていて、
どの世帯でも利用しやすい店舗設計です。
各店舗に新人とベテランが配置されて
いるため、技術面のカバーもされています。
眼鏡に特別なこだわりがない患者さん
には最初におすすめする価格帯の店舗です。
高価格帯
高級だからと言って完璧とは限りませんが、
少なくとも高価格な眼鏡を納得して
買ってもらえる技術、接客レベルの
高さを持っています。
店舗によるとは思いますが、
遮光レンズやオクルーダーレンズなどの
処方に対応してくれる柔軟性もあります。
ちょっとしたフィッティングが見え方に
影響する、
- プリズム眼鏡
- 累進眼鏡
- 弱視治療用眼鏡など
の処方では、まず最初に紹介したい
価格帯の店舗です。
運転免許用の眼鏡処方で注意すること
運転免許の更新のための眼鏡処方は
かなりの頻度で行います。
まだ経験したことがないという人は、
トラブルを避けるためにも参考に
して下さい。
免許の種類を聞く
「免許更新用の眼鏡処方」と知ったら、
必ず免許の種類を聞いて下さい。
たいていは
「普通免許/大型免許」
「普通免許/二種免許」
という分け方で通じます。
勝手に「普通免許だ」と思い込んで眼鏡
処方をすると、「実は二種で通らなかった」
というトラブルになりかねません。
【免許更新に必要な視力】 | 【深視力】 | |
第一種運転免許 (普通免許、大型免許、自動二輪免許など) | 【普通自動車/自動二輪】 片眼0.3以上 両眼で0.7以上 ―――――――――― 【大型】 片眼で0.5以上 両眼で0.8以上 | なし ―――――――――― あり |
第二種運転免許 (乗客を運ぶ目的の免許) | 片眼で0.5以上 両眼で0.8以上 | あり |
大型免許は一種、二種両方ありますが、
視力の基準は同じです。
普通免許は一種、二種で視力の基準が
異なりますが、
一般的に「普通免許」と言えば「一種」を指し、
タクシーなどは「二種」と呼ぶことが多い
です。
- 普通の車やバイクは片眼で0.3以上、両眼で0.7以上
- 大型車やタクシーは片眼で0.5以上、両眼で0.8以上
これを必ず暗記して下さい。
深視力検査ができる場所を把握
二種免許では深視力(三桿法)の
試験があります。
- 遠くから近づいてくる1本の棒が、固定された2本の棒の間を通る
- 最も横並びに近いと
思ったところで止める - 3回測定し、固定された2本の
棒の前後2cm以内で合格
「深視力が通らない」という方には
必ず眼位検査を実施します。
結果によっては
プリズム眼鏡の処方も行います。
また、
両眼視機能に異常がない場合は
練習次第で合格できることもある
ので、深視力の練習をしたがる
患者さんは多いです。
可能であれば近隣の眼科や眼鏡店で、深視力計が置いてある施設を把握しておくのもいいですね
まとめ
眼鏡処方で「そういえば…」
となる知識を3つ紹介しました。
赤緑試験は目安程度にし、
精度の高い眼鏡が求められる場合は
中価格帯以上の眼鏡店を紹介する
ようにして下さい。
最も注意したいのは
免許の種類を聞くことです。
誤った認識のまま検査を進めると、
検査時間が医療費が無駄になり、
患者さんの負担が増えるので注意して下さい。
本記事の知識を明日の診療に役立てていただけたら幸いです