「眼鏡処方をする前にするヒアリング」8つのポイント
眼鏡処方は自分で何とか学んできたけど、このやり方でいいんだろうか
身近に聞ける人もいないから、誰かのやり方を参考にしたい
本記事はこのような不安に答えます。
眼鏡処方は日本の東西、施設、個人の
知識やこだわりによって異なるため、
絶対的なルールはありません。
まったく手探り状態の人は、
一つのやり方・考え方として参考に
していただければと思います。
眼鏡処方前のヒアリングが最も重要
眼鏡処方で一番重要なのは、
- 何のための眼鏡がほしいのか
- それは眼鏡で解決するのか
という点です。
①眼鏡を作る目的は何か
何のための眼鏡かについては
『実践で役立つ15の知識』で
書いたように、なるべく詳しく
聞き取りをします。
「遠くを見るため」だけでは不十分。
運転なのか、ゴルフなのか、テレビなのか
によって、患者さんの適応力との
すり合わせが変わります。
眼鏡に不慣れな方でも運転用であれば、無理やりでも両眼で(0.7)以上の眼鏡をかけてもらわなければいけません
②眼鏡で解決するのか
眼鏡処方で無駄な時間を費やさない
ためにも、「眼鏡がほしい=見えづらい」
問題は眼鏡で解決するのか予測します。
次の場合は眼鏡処方にならない
可能性が高いです。
- オートレフ値の信頼度が低い
- 眼疾患を疑う主訴がある
- 眼鏡が苦手で弱いJBでもあまり使わない
オートレフ値の信頼度が低いということは、
中間透光体の混濁が疑われるので、
矯正視力次第では眼鏡処方より
治療が優先されるかもしれません。
「影が見える」「急激に見づらくなった」
などの主訴がある場合は、仮に視力が
出ていても、先に診察に回した方が
いいでしょう。
弱いJBでも慣れにくい方が
「もっとよく見たい」と訴える場合は、
「まず今の眼鏡から慣れて下さい」と
説得することもあります。
「今このまま眼鏡処方をするべきではない」という判断を素早くできるかどうか
も、限られた検査時間を有効活用するテクニックです。
すでに眼鏡を使っている場合
すでに眼鏡を使っている場合は、
作製当時の情報から眼鏡の扱い方まで
詳細をヒアリングします。
ヒアリングにより、JBに問題がありそうなら
眼鏡処方できる可能性が高く、眼そのものに
問題がありそうなら眼鏡処方をやめることを
考えます。
③いつ作製した眼鏡か
- 作製当時の屈折度数がわかる
- それによって今見づらい原因が
眼鏡かどうか予想できる
JBを作製したのがかなり古ければ、JBの
作り替えになってもおかしくありません。
しかし、
つい最近作ったのに合わないとなると、
眼鏡処方で解決できるか少々ブレーキが
かかります。
ー例ー
10年前に作製したなら、
- 確かに度がずれていてもおかしくない
- 眼鏡を処方する理由になりそう
1年前に作製したなら、
- そんなに時間が経っていない
- 何か眼疾患の始まりかもしれない
1か月前に作製したなら、
- 1か月で合わないのは眼疾患が理由か
- 処方値が不適切だったか
- 本人の適応力に問題があったか
適応力に問題があるなら、それを考慮したが眼鏡処方が必要です
④作製当時は見えていたか?
- JBに問題があったかどうか予想できる
- 本人の適応力に問題があったかか予想できる
『いつ作製したか?』とセットで聞きたい
のが、作ったときはどうだったのかです。
作製時の見え方により、今回の眼鏡処方で
解決するのかどうかの判断材料になります。
ー例ー
作った当初はよく見えていた
- 度がずれてきた可能性
- 眼疾患の可能性など
作った当初から見づらかった
- どう見づらかった聞き、現在の
屈折と合わせて問題点を探る
なぜ眼鏡店へ相談しなかったのか聞き、
「遠慮した」のであれば、
「遠慮する必要はない」と伝えます。
見づらければ必ず教えていただくよう
お話しして下さい。
患者さんからのフィードバックで眼鏡処方の技術がどんどんアップします!
⑤どう「合わない」と感じるのか?
- 訴えにより原因を予想、解決への仮説を立てる
「合わない」「見づらい」は漠然として
いるので、もっと具体的に困りごとを
聞き出します。
眼鏡処方をするかどうか、するならどんな
処方値にするかの判断材料となります。
ー例ー
【主訴】 | 【考えられる可能性】 |
くらくらする | 度の強すぎ、フィッティングが悪いなど |
歪む | 乱視が強すぎ、眼疾患など |
まぶしい | 眼疾患、カラーレンズで対応できる |
距離感がつかみにくい | 左右差、乱視、斜視、不慣れなど |
見えるけどはっきりしない | 度のずれ、眼疾患など |
遠くはいいが近くはダメ | 老視の影響、遠用JBで近くを見ている |
⑥どんな使い方をしていたか?
- 度数の問題ではなく使い方に原因がある可能性
- 問題があれば使い方の指導をする
JBの扱い方に問題がある場合、
極端に言えば、度は合っている
可能性があります。
扱い方のアドバイスをし、眼鏡処方を
やめて、JBをそのまま使うこともあります。
ー例ー
【眼鏡の状態】 | 【扱い方の問題】 |
フレームがつぶれている | 踏んだりしていないか |
フレームの片側だけ広がっている | 片手だけで眼鏡のかけ外しをしていないか |
レンズがボロボロ | お湯で洗う、熱に当てるようなことをしていないか |
フレームやレンズが傷んでいるようなら原因を伝え、今回の眼鏡処方でも同じことにならないよう伝えます
眼鏡を持っていない場合
眼鏡を持っていない患者さんには、
使っているけれど持ってきていないだけか、
そもそも使っていないのかを聞きます。
⑦眼鏡を使っているか?
- JBがあった方が処方しやすい
- JBの不満点がわからないと同じような
眼鏡処方をしてしまう可能性がある
ー例ー
自宅にある①:
持っているけど合わない
可能であれば、自宅にある眼鏡を持ってきて
いただいてから眼鏡処方できればベスト。
自宅にある②:
ほとんど使ってないから
このまま眼鏡合わせをしていい
自宅にある眼鏡とは別の度数になることを伝え、
眼鏡処方をする。
まったく初めて:
眼鏡の説明や装用テストなど
より丁寧に行なう
眼鏡の使い方や装用の指導など、
細かく丁寧に行なう。
⑧過去に眼鏡は使っていなかったか?
- かつての状況を聞き同じ理由で新しい
眼鏡を使わなくなる可能性を予想し、
回避する眼鏡を処方できる
ー例ー
近くが見づらい50代
いつからいつまで使っていた? | 40代 |
どんな眼鏡を使っていた? | 累進レンズ |
なぜ使うのをやめた? | 眼鏡店で勧められて作ったが慣れなかった |
今はどうしている? | 出来合いの老眼鏡を使っているが疲れる |
予想できること
過去に累進レンズを使った経験があり、
慣れなかったということなので、
今回は単焦点を勧める。
まとめ
今回のヒアリングは視力検査を行う前に、
- どんな眼鏡なら問題が解決するか
- そもそもその問題は眼鏡処方で解決するか
の予想を立てるための手段の一つです。
聞き方や聞く内容は検査者が知りたい
情報によって異なるため、今回の記事が
すべて正解というわけではありません。
「これまで深く考えてこなかった」という人は、一つの手がかりとして参考にして下さい!