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【眼鏡処方の記事一覧】実践で役立つ15の知識

視能訓練士 眼鏡処方 まとめ

視能訓練士の中で、眼鏡処方に自信が
ある人はどのくらいいるでしょうか?

  • 国試に受かるための知識
    くらいしかない
  • 何も考えずにレフ値を入れておく
  • とりあえず完全矯正より
    0.5Dくらい弱めておく

こんな眼鏡処方とはさよならしましょう。

眼鏡処方は一人一人の患者さんごと、
あらゆる可能性を考えながら、
頭をフル回転させて行うものです。

この記事では、眼鏡処方をする前に
必ずやるべきことから、処方値に
迷ったときの手がかりも含め、
15のアドバイスを載せています。

教科書に載っていない問題に直面した
ときの、解決の糸口になれば幸いです。

先輩視能訓練士

目次から知りたい記事へ飛んで下さいね

眼鏡処方は「正解は一つ」ではありません。施設や個人の経験値によってやり方が異なります。あくまで一例として参考になさって下さい。

目次

眼鏡処方をする前に頭に入れておくこと

眼鏡処方をする前には、次の3点が
重要です。

  1. 現状把握をする
  2. JB(使用眼鏡)で確認すること
  3. レンズ光学中心の理解をする

眼鏡処方をする前に現状把握を徹底

眼鏡処方を開始する前に必ず

「今何に困っていて、どうなりたいのか」

を徹底調査し、

  • 「どのような眼鏡で解決できるか」

の仮説を立てて下さい。

そのためにはしつこいくらい詳細な
聞き取りが必要です。

スクロールできます
知りたいこと聞き方の例(具体的に聞く)
どんな時に困っている?テレビを見る時?
本を読む時?
運転する時?
映画を見る時?
ゴルフをする時?
何に困っている?今の眼鏡が見づらい?
今一番困っていることは何?
どこで困っている?散歩で?
家事をしていて?
デスクワークで?
どのように困っている?どう「見えづらい」のか?
一日の中で変化がある?
見えてはいるけど歪む?
ぼやける?
遠くはいいが近くが見づらい?

問診は「どんな時に見えにくいですか?」
だけでは足りません。

「例えばテレビの字幕ですか?それとも運転で標識を見る時ですか?」

など、かなり具体的な答えを引き出します。

得られた回答から眼鏡の目的を聞き出した
上で、

  • そもそも眼鏡処方で解決できる問題か」
  • 「どんな眼鏡なら解決できるか」

必ず上記の仮説を立ててから、
視力検査を始めて下さい。

JBを受け取ってから確認すること

JBを持っている場合、預かってそのまま
レンズメーターに持っていくのではなく、
まず目視でJBの情報を読み取ります。

確認するべき一例は以下のようなことです。

スクロールできます
フレームの歪み
レンズの傷み
この有無により「見づらい」主訴が度数による問題だけではない可能性がある
眼鏡の状態の古さ新しいのにJBが合わないのなら、処方に問題があったか、度数以外に原因がある可能性がある
累進レンズか累進レンズとわかったら加入度数を確認し、刻印通りの加入が入っているかレンズメーターで測定する
プリズムが入っていないかレンズ越しの対象物がレンズの左右で上下にズレている
上下プリズム

瞳孔中心があるはずの位置で対象物が左右にズレている
水平プリズム:写真↓

プリズム眼鏡 像のジャンプ 見え方

目視後にレンズメーターを使用します。

プリズムが入っているかもと思ったら、
先に患者さんのPDを測って下さい。

PDの位置で検出されたプリズム量を
記載します。

先輩視能訓練士

単焦点では先にPDを測らなければ、JBのプリズム量を測定できません

JBは貴重な情報源です。
度数だけ確認して戻すのではなく、

「この患者さんはなぜこの眼鏡で見づらいと訴えるのか」

をよく推測して下さい。

瞳孔中心とレンズ光学中心の関係が重要

瞳孔中心とレンズ光学中心にズレがある
と、度数は合っていても「見えづらい」
と訴えてくる患者さんがいます。

レンズは性質上、中心からズレるほど
収差が生じるため、鮮明さが落ちるの
です。

ズレてしまう原因としては、

  • PDが間違っている
  • レンズが重くて検眼枠がずり落ちる

といった点が考えられます。

もしずり落ちるようなら検眼枠をテープ
で額に留めるなどして固定します。

瞳孔中心と光学中心のズレを意識する
ことは、「今の眼鏡が合わない」と
言われたときにも役立ちます。

視力検査をする際には上記の問題が
ないかを見て下さい。

先輩視能訓練士

屈折度数が強くなるほどズレによる視機能の低下は避けられないため、注意して下さい

小児の眼鏡処方

小児の眼鏡処方には本人の意志だけ
でなく、保護者の理解が深く関わって
きます。

保護者との信頼関係をいかに得られるか
が重要です。

学校検診A~D判定 眼鏡処方の判断基準

学校検診のA~D判定は、どの結果で
あっても眼鏡処方の可能性
があります。

学校検診の視力検査はプロが行なう
わけではなく、小児が正しく視力検査
できているかまで、100%把握できない
からです。

瞬間的に目を細めている子、あごを
引いて上目づかいで回答している子
など、近視の予兆が見過ごされている
ことは多々あります。

「視力1.0以上」のA判定でさえ、
眼科で測ると0.6(C判定)で
眼鏡処方になったこともありました。

先輩視能訓練士

学校関係者には申し訳ないのですが、学校検診はどんな結果であれ、疑ってかかるべきです

【小学校低学年】初めての遠用眼鏡処方

子どもの近視化が深刻になる昨今、
「両親は目が良くても子どもの目が悪い」
ケースが増えています。

眼鏡への知識がない保護者には、

  • 処方箋を受け取った後の
    眼鏡店の選び方
  • フレームの選び方
  • 保証期間の有利な使い方

などを説明します。

提携している眼鏡店がなければ、

  • 保証期間の長い眼鏡店
  • 子ども用のフレームが多い眼鏡店
  • フィッティング技術が
    伴っている眼鏡店

などを案内します。

安価な眼鏡店をおすすめすべきでは
ありませんが、経済的な事情を抱える
家庭の助けになっていることも
考慮して下さい。

フレーム選びは
「本人の好みを優先すること」
が大事です。

先輩視能訓練士

可能であればずり落ちにくいもの、変形しにくいものがおすすめです

最後に、

保証期間を必ず確認するよう伝える

こともお願いします。

度数交換の保証が切れる直前に再度
受診
し、近視の進行があれば再処方を
するのが得であるとお話しします。

心因性視力障害の眼鏡処方

心因性視力障害の眼鏡処方は、

いかに「思い込みを成功させるか」

により成否がわかれます。

  • 度なしであっても「見える度が入っている」ように思い込ませるか
  • +0.25Dであっても「この眼鏡があれば大丈夫」と思わせられるか

そのためには、検査者が患児の
信頼を勝ち取れる「演者」になる
必要があります。

パフォーマンス例

「ほら、この眼鏡があればだいぶ
 見やすくなったんじゃない?」

「うん…見やすい…!」

「よかった~(*^-^*)
 これで黒板も見えるね!
 一応、気持ち悪くならないかどうか、
 ちょっと試そうか」

そして、装用テスト中の本人には
聞こえない場所で保護者に説明

して下さい。

  • 本当は目が悪くないこと
  • ストレスを抱えている可能性が
    あること

眼鏡を作ることを強要はできませんが、
眼鏡がストレス回避のキーアイテムに
なることだけは伝えて下さい。

眼鏡処方を拒否する保護者を説得する方法

眼鏡を処方を嫌がる保護者を
説得するためには、

  • 論理的な説明
  • 信頼に足ると思わせる態度

の2点を心掛けて下さい。

例えば「眼鏡をかけると目が悪くなる」
と信じているせいで、眼鏡処方を拒否する
保護者への説明は次のような感じです。

保護者への説明例

眼鏡で目が悪くなるという考え方は
実はまったくの誤解

近視は眼球が平均より
大きい目のこと。

身長が伸び、体が大きくなるのと
同じように眼球も成長する。

眼鏡をかけてもいなくても、
眼球の成長を止めることは
できない。

もっと近視が進んでから初めて
眼鏡をかけるとなると、慣れ
にくくて日常生活にも影響
出てしまう。

以上のように、近視の進行と眼鏡に
因果関係がないことを説明し、
眼鏡をかけないデメリットも伝えます。

保護者の方と話すときは、
目と目を合わせて、堂々とした態度
のぞんで下さい。

先輩視能訓練士

結果として眼鏡処方にならなかったとしても、どのようなことを伝えたかはカルテに記載します

大人の眼鏡処方

大人の眼鏡処方では、
眼鏡を作る目的と慣れやすさとの
すり合わせ
が大切です。

  • 50代の近用単焦点
  • 40代~の遠視眼鏡
  • 50代の初めての累進レンズ

について解説します。

なお、大人の近視の眼鏡処方については、

「完全矯正・弱める・強めるの差」

を参考にして下さい。
(クリックで見出しにジャンプします)

【50代】近用単焦点の処方

50代の近用眼鏡処方では、
患者さんの「ネガティブな感情」
寄り添って信頼関係を築いて下さい。

ネガティブな感情とは

  • 年をとりたくない…
  • 老眼になりたくない…

というゆううつな心です。

親子ほども若い視能訓練士に

「老眼なので老眼鏡が必要ですね」

とバッサリ言われると、
少なからず傷つきます。

眼鏡処方には患者さんの性格や
タイプを理解
し、心理的な距離を
縮めることが大事です。

反感を持たれたり壁を作られたり
すると、正しい情報が得られなく
なる可能性があります。

「そうですね…ご年齢から考えましても、近くが見づらくなるのは…みなさんそうですね…」

と慎重に話すのも作戦の一つ。

もちろん、上記の言い回しが
正しいとは限りません。

先輩視能訓練士

患者さんのキャラクターや心情に合わせた語りかけをして下さい

【50代】遠視眼鏡の処方

40代以降の遠視眼鏡の処方では、

「遠視とは何か」の理解をしてもらう

ところからスタートです。

近視と違い、これまで目が悪いと
思ったことがなく、遠用眼鏡をかける
理由を理解しきれない方も多いからです。

さらに

  • 「遠視と老視の違い」
  • 「遠視の眼鏡で楽になる理由

もあわせて説明しなければいけません。

遠視眼鏡の説明例

今遠くが見づらいのは遠視だから。

遠視とは遠くも近くもピント合わせの筋力で見える目である。

加齢によりピント合わせの筋力も落ちている

だから遠くも近くも見づらい。

遠視眼鏡をかければ、遠くも近くも今より見やすくなる。

ただし、遠視眼鏡は老眼を治すものではない。

そのため、老眼鏡は別に必要である。

このように、順序立てたていねいな
説明が必要となるため、ただの近視の
眼鏡処方より時間がかかる
かもしれません。

【50代】累進レンズの処方

累進レンズの処方では、必ず使い方の
指導を行い、メリット・デメリットを
伝え、装用テストに時間をかけて下さい。

累進レンズは合う人、合わない人が
分かれる眼鏡です。

施設内に階段があるようなら、
十分気をつけつつ、階段の上り下りも
試して頂く
のがおすすめです。

累進レンズは足元を見るときが
最も怖い
からです。

その上で、

  • 遠近両用を使うのにはこのハードルを越える必要があること
  • 少しでも若いうちから始めた方がいいこと

を伝えます。

累進レンズはできれば
40代から始めたいところです。

50代でスタートするのであれば、
慣れやすくスタートできる限界が
迫っている
ことを教えて下さい。

先輩視能訓練士

患者さんが迷っているのであれば、ひとまず眼鏡処方箋を発行し、眼鏡店で改めて装用テストをしてもらうのもいいでしょう

白内障手術後の眼鏡処方

白内障手術後の眼鏡は、手術前に
どのような目の状態だったか

によって、満足度や慣れやすさが
変わります。

白内障手術後の眼鏡処方(単焦点レンズ)

両眼手術した場合は比較的問題なく
処方ができます。

注意したいのは、これまで強度遠視
だった人が弱い近視になってしまい、
眼鏡処方をするケースです。

凸レンズと凹レンズの違いから、
像の拡大縮小が真逆になるため、
単焦点と言えど距離感がつかみ
にくくなる
のです。

また、片眼のみ手術した遠視の場合は、
左右差の影響がどこまで出るのか
装用テストの時間を長めにとって
確認します。

高齢の患者さんほど適応力は
落ちるため、本人・家族と相談し、

「多少度がズレていても、あえて古い眼鏡のまま過ごす」

という選択肢もあります。

眼鏡処方による不利益が考えられる場合、
白内障手術後であっても眼鏡処方を
「しない」可能性
も想定して下さい。

白内障手術後の眼鏡処方(累進レンズ)

白内障手術後に累進レンズ処方を
するのは、次のような患者さんで
あることが多いです。

  • 両眼手術して、これまで累進レンズを使っていた方
  • 片眼手術をして、これまで累進レンズを使っていた方
  • 片眼手術をした20代~30代の若い方

年齢問わず、これまで累進レンズを
使ったことのない方が、術後に
累進レンズを使うのはなかなか
難しいでしょう。

IOL(眼内レンズ)眼では調節力が
ゼロになるため、累進レンズの
加入度数を+3.00D近くに
設定せざるを得ない
ためです。

先輩視能訓練士

ただし、もともと最強度近視の方や年齢が若い方ほど、意外と使いこなせることもあります

「累進レンズは無理だろう」と一律に
切り捨てるのではなく、提案をしつつ、
本人のやる気と適応力に託すこともある
と覚えておいてください。

眼鏡処方値で迷った時の対処法

眼鏡処方の数値を決定する段階で、
迷うことは多々あると思います。

数値の選び方について、
次の3つを参考にして下さい。

「完全矯正・弱め・強め」で眼鏡処方する違い

眼鏡処方は「完全矯正より弱めに
しなければならない」というルールは
ありません。

処方の目的や患者さんのニーズに
合わせて、完全矯正・弱め・強め
処方します。

スクロールできます
度数実例方法
完全矯正で処方する本人に抵抗がなく装用テストもOKであれば問題なし
しっかり遠くを見たい
小児の眼鏡処方弱視治療
・完全矯正で装用テスト
弱めで処方する慣れやすさ重視で本人の希望あり
近業が多い
・完全矯正から0.5D弱め、±0.25Dずつ調整し、自覚的に満足する度数で決定
強めで処方する長年過矯正の眼鏡を使っていた
ものすごく遠くが見たい

過矯正にしないと視力が出ない
間欠性外斜視の治療
・完全矯正より‐0.25Dずつ強め、自覚的に満足する度数で決定

・自覚的に満足する度数と、負担がかかるギリギリのすり合わせをする

・間欠性外斜視は最高視力を保ちつつ両眼視を維持しやすい度数で決定

弱めの処方希望でも、運転をするので
あれば両眼で0.7以上は必要です。

過矯正で処方する場合は、
必ずデメリットも伝え、カルテや
処方箋への記載
も忘れないように
して下さい。

満足度の上がる乱視の眼鏡処方

乱視は必ずしも完全矯正をする
必要はありません。

慣れやすさも考慮して、
完全矯正の3分の2から3分の1程度
抑えることが多いです。

「乱視をどのくらい入れるべきか」
については、一つの参考として
次の点をチェックしてみて下さい。

スクロールできます
見るべき乱視の値考え方の一例
左右の乱視軸はそろっているか左右で90°と180°が違うなら、
90°の方を多めに入れる
左右とも斜乱視か斜乱視は完全矯正の3分の1程度
から様子を見る
角膜乱視と全乱視どちらが強いか角膜乱視が強い場合は乱視矯正を
しっかり入れないと満足度が低い
ことがある
角膜乱視と全乱視の軸はそろっているかレフ値が信用できないこともあるため
必ずクロスシリンダーで確認する
強度乱視かレフ値を信用せず、
必ずクロスシリンダーで確認する

JBや本人の適応力も考慮するため、
上記の考え方はあくまでも目安です。

斜乱視については180°か90°に
そろえてしまうか、斜めのままの方が
良いのか、装用テストの自覚によって
決めて下さい。

不同視の眼鏡処方にある誤解

不同視の眼鏡処方にある誤解とは、

左右差を2Dまでに抑えなければ
いけないという思い込み

です。

何も考えずにただ2D以内に抑えようと
すると、患者さんの両眼視を妨げ、
QOVL(視生活の質)を下げてしまいます。

2D以内に抑えなくていい方は、次の通りです。

  • 幼少期から不同視の眼鏡をかけている
  • JBですでに左右差のある
    眼鏡をかけている
  • 勝手に2D以内に抑えられ、
    視機能の低下を感じている

もちろん、2D以内に抑えた方が
いい方もいます。

  • 幼少期から不同視だったが
    CLメインの生活だった
  • 幼少期から不同視だったが
    眼鏡をかけたことがなかった
  • そもそも眼鏡をかけるのが嫌い
  • 眼鏡をかけるとふらつきを感じやすい

不同視だからと言って不等像を
感じるとは限りません。

眼鏡の左右差が4Dあっても難なく
眼鏡をかけこなしている方もいます。

教科書的な数値は頭に置きつつ、
JBやこれまでの生活スタイルを確認し、
必ずよく相談してから眼鏡処方を
行なってください。

 

視能訓練士 眼鏡処方 まとめ

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