【プリズム眼鏡の処方】組み込みタイプかフレネル膜タイプか?選び方とそれぞれの特徴
プリズム眼鏡を合わせる時に組み込みタイプかフレネル膜タイプか、どちらがいいかわかりません
斜視による複視や眼精疲労がある場合、
プリズム眼鏡を合わせる必要があります。
視能訓練士である私たちがプリズムの
特徴を知らなければ、患者さんに最適な
プリズムを提案することができません。
- 組み込みタイプとフレネル膜タイプのプリズムの特徴と選び方
組み込みタイプとフレネル膜タイプの特徴をそれぞれ覚えてしまえば、そんなに難しくないんですよ
この記事を書いた人
- 歴20年目の視能訓練士
- 小児・斜視・GPが得意
組み込みタイプの特徴
組み込みタイプのプリズムの特徴は以下の
通りです。
- 一般的には一枚のレンズに組み込めるのは5Δまで
- 小角度の斜視では第一選択となる
大きな特徴は、組み込める限界が一般的
には5Δまで(両眼合わせて10Δ程度)で
あり、この範囲内で複視が消える斜視では
第一選択となります。
組み込みタイプのメリットとデメリットを
見ていきましょう。
組み込みタイプのメリット
- 外見上プリズムが入っているのは正面からはほぼ分からない
プリズム眼鏡かどうか正面からはほぼ
分からないというのは、外見を気にする
患者さんには喜ばれる点です。
ただし、組み込みのプリズム度数が強く
なる場合、横から見ると基底方向が分厚く
見えることがあります。
組み込みタイプのデメリット
- 大きな斜視角には対応できない
- プリズム度数が変わった時に作り替えが必要
- 5Δまで入れるとレンズが重くなる
斜視角が大きくない患者さんには対応
できますが、両眼で約10Δ以上必要な
患者さんには不向きです。
※ただし、レンズメーカーの特注が可能
なこともあるのでこの限りではありませ
ん。
また、レンズに組み込んであるので、
プリズム度数が変わった時にはレンズ
ごと交換する必要があります。
そのため、度数が変動する可能性がある
患者さんにはおすすめしないで下さい。
屈折度数との兼ね合いもありますが、
最大5Δまで入れるとレンズが分厚く
なり、重みが出るのも難点です。
患者さんに、組み込みタイプのメリットとデメリットの両方を説明できるよう押さえておきましょう
フレネル膜タイプの特徴
一方のフレネル膜タイプの特徴は以下の
通りです。
- 大きな斜視角にも対応できる(1〜40Δ)
- 眼鏡に水でくっつけられる
- 必要な時だけ貼ることもできる
フレネル膜の一番の特徴は、大きな斜視角
にも対応できる(1〜40Δ)というところ
です。
また、眼鏡に水でくっつけるだけなので、
必要に応じて簡単に張り替えがききます。
メリットとデメリットを見てみましょう。
フレネル膜タイプのメリット
- プリズム度数が強くても厚みが均一で薄い
- プリズム度数に変動があっても貼り替えができる
- レンズの下方だけに貼るなど、さまざまな貼り方ができる
プリズム度数が強くても厚みが均一で
薄く、組み込みより軽量化できるという
のもメリットです。
貼り替えや貼り方の融通が利くので、
斜視角に変動があっても度数変更が簡単、
かつ複視のひどい日にだけ貼る、レンズの
下方だけに貼るなど、自由な使い方ができ
ます。
フレネル膜タイプのデメリット
- フレネル膜を通して見ることによって視力が下がる場合がある
- 外見上貼ってあるのがわかる
- 経年変化で変色や劣化が見られることがある
フレネル膜(度数が強いほど)を通して
見ることによって解像度が下がり、視力
が下がる場合があります。
視力低下の訴えは、フレネル膜を使っている患者さんからはよくあることです
眼位検査だけでなく、フレネル膜上の視力検査も必ずするようにして下さい
患者さんが気にする一番のデメリットは、
フレネル膜を貼ってあるのが外見上一目
瞭然だというところです。
複視などの不快感が取れるなら外見は気に
しないのか、それともフレネル膜による
外見の変化は許容できないのかなど、
患者さんとよく相談するようにして下さ
い。
また、フレネル膜は経年変化による変色や、
劣化が見られることがあります。
検査をする時に必ずフレネル膜の状態も
チェックするようにして下さい。
注意点
- フレネル膜が嫌な患者さんには手術が適応になる場合がある
- フレネル膜を自分で貼り替える際に、間違った貼り方をしてしまうことがある
フレネル膜がどうしても嫌という患者
さんは、複視や眼精疲労を取るための
手術を考える必要が出てきます。
また、フレネル膜がはがれてしまって
自分で貼り直したという患者さんがい
ます。
貼る向きが間違っていたり、うまく貼れ
ていなかったりする場合があるので、
わからなくなったら眼科に来てもらう
ようにして下さい。
はがれた時の貼り方や汚れた時の洗浄の仕方(眼鏡洗浄液や中性洗剤で優しく洗う)など、施設で説明書を作っておくこともおすすめです
症例に合わせたプリズムの選び方
組み込みタイプ、フレネル膜タイプ、
それぞれの特徴を知った上で処方を
していきましょう。
基本的に
- 斜視角が小さい場合は組み込みタイプ
- 斜視角が大きい場合はフレネル膜タイプ
- 組み込みとフレネル膜を併用する方法
と覚えておけばOKです。
斜視角が小さい場合は組み込みタイプ
斜視角が小さい場合の一例です。
完全矯正レンズにて
Far 8ΔXT diplopia(+)
Near 10ΔXT’ diplopia(+)
B)3ΔBase inプリズム装用にて
Far ほぼortho diplopia(−)
Near 2ΔXP’ diplopia(−)
最終的に眼位は良好、複視もないので
この度数でOKということになります。
斜視角が大きい場合はフレネル膜タイプ
斜視角が大きい場合の一例は以下の通り
です。
完全矯正レンズにて
Far 35ΔXT diplopia(+)
Near 30ΔXT’ diplopia(+)
B)14ΔBase inフレネル膜プリズム装用にて
Far 6ΔXP diplopia(−)
Near 2ΔXP’ diplopia(−)
という感じです。
最終的に眼位良好、フレネル膜装用前の
複視は消失しているのでこの度数でOK
です。
組み込みとフレネル膜を併用する方法
先ほどのフレネル膜装用例の場合、14Δ
のフレネル膜タイプを使って視力の低下
が気になるようなら、B)5ΔBase inの
組み込みタイプのプリズム眼鏡を作って、
残りの斜視角に対して最小のフレネル膜
プリズムを貼るという方法も選べます。
先ほど同様、完全矯正レンズにて
Far 35ΔXT diplopia(+)
Near 30ΔXT’ diplopia(+)
B)5ΔBase in組み込みプリズム眼鏡装用にて
Far 20ΔXPT diplopia(+)
Near 18ΔXPT’ diplopia(+)
この残った斜視角に対して
B)8ΔBase inフレネル膜プリズムを
組み込みプリズム眼鏡上に追加して
Far 6ΔXP diplopia(−)
Near 2ΔXP’ diplopia(−)
という感じです。
プリズム選びは、患者さんの主訴に合わせて行なう必要があります。患者さんとよく相談しながら決めていって下さいね
まとめ
プリズム眼鏡合わせで、組み込みタイプか
フレネル膜タイプかどちらを選ぶべきかを
ご紹介しました。
組み込みタイプ、フレネル膜タイプ、それ
ぞれの特徴を押さえながら処方してみて
下さい。
複視や眼精疲労などの不快な症状が取れると、患者さんにとても喜ばれますよ
頑張って下さいね!