「累進レンズと単焦点レンズ」どちらを処方するか判断する6つのポイント
累進レンズと単焦点レンズ、どっちを処方すればいいの?
老眼世代の患者さんの眼鏡処方では、
単焦点レンズと累進レンズのどちらを
処方するか判断に悩むことがあるかも
しれません。
今回の記事では、どちらを処方するか
判断する6つのポイントを紹介します。
それぞれのメリットとデメリットも
併せて、眼鏡処方の参考にして下さい。
本記事の判断基準はあくまで一例です。症例や状況によって千差万別であることを念頭に置き、お役立て下さい。
単焦点レンズの特徴
単焦点レンズは累進レンズに比べると
使いやすい眼鏡です。
一定の距離に合わせて作製するので、
使い方を細かく指導する必要はなく、
眼鏡を初めて使う方でも慣れやすい
でしょう。
眼鏡を使用したことがない老眼世代の
患者さんには、単焦点から処方すること
が多いです。
単焦点レンズのメリット
- 累進に比べて装用感や見え方の質が良い
レンズに均一に度数が入っているので、
歪みを感じにくいです。
見たい物、距離が決まっている場合は
単焦点がおすすめです。
- 視線の動かし方など使い方のコツが必要ない
レンズのどこを視線が通っても同じ
見え方なので、見え方に違和感が
なく、扱いが簡単です。
- 細いフレームなど好きなデザインを選べる
単焦点ではどれでも好きなデザイン
のフレームを選択できます。
単焦点レンズのデメリット
- 状況に応じて、眼鏡をかけ替えるのが手間である
単焦点は決まった距離にしかピントが
合わないので、ほかの眼鏡と併用せざる
を得ない場合があります。
かけ替えを手間に思うかもしれません。
- 常に1本以上の眼鏡を持ち歩く必要がある
用途に合わせた単焦点(遠用・近用など)
を1本以上所持していると、常に眼鏡を持ち
歩かなければなりません。
荷物が増えることをデメリットに感じる方
もいます。
累進レンズの特徴
累進レンズは段階的に度数が変化して
明視範囲を確保できるレンズです。
遠近、近々など目的に合わせてレンズ
の仕様を指定できます。
視線の動かし方にコツが必要なので
使用者を選びますが、慣れれば便利な
眼鏡です。
累進レンズのメリット
- かけ替えの手間がない
一本の眼鏡で視界のほぼ全域をカバー
しているため、かけ替える手間があり
ません。
- 持ち運びが便利
基本的にはかけっぱなしになるので、
老眼鏡を別途持ち運ばなくて済みます。
老眼鏡をかける必要がないので、「老眼鏡=シニア世代」の印象を避けられるメリットもあります
累進レンズのデメリット
- 慣れるまでは、視線の動かし方など使い方にコツが必要
首を動かさず視線だけを動かすことに
慣れる必要があります。
コツを掴めないまま挫折する方もいます。
- レンズの構造的に違和感が出る可能性
レンズの構造上「歪んで見える、ふらつく」
などの違和感を感じる可能性があります。
加入度数が多いと違和感を感じやすいです。
- 細めのフレームだと近用部が削られてしまう
近用度数の範囲を広く取るためには、
縦幅の広い眼鏡フレームを選ぶ必要が
あります。
フレーム選択の自由度が低くなります。
近々両用レンズの特徴
近々両用レンズも累進レンズですが
遠近両用レンズとは役割が異なります。
遠近と中近は遠くの度数を基準にプラス
の加入をして作成しますが、
近々両用レンズは、近用度数を基準にレンズの上部にマイナス加入して、奥行きのある見え方を確保します。
遠くは見えませんが、PCの画面とキーボード、新聞の手前と奥など、奥行きを少し持たせたい場合に最適です
単焦点/累進どちらを処方するか判断する6つのポイント
単焦点と累進のどちらを処方するか
迷った時に、判断の助けになる6つの
ポイントを紹介します。
眼鏡の目的
眼鏡の使用目的は大切な項目です。
単焦点レンズを処方する例
- 近くの見やすさを重視したい
- 一定の距離を見る趣味に数時間単位で没頭する
理由
視野が広く慣れやすいというメリットがあるため
累進レンズを処方する例
- 眼鏡のかけ替えが面倒
- 読書したいしパソコンも見たい
理由
一本の眼鏡で遠~近までカバーできるため
年齢
年齢はどちらの眼鏡を処方するか判断
するために欠かせない指標です。
調節力がなくなるほど強い加入度数が
必要になるため、JB歴によっては単焦点
での処方が推奨されることがあります。
近用単焦点レンズを処方する例
- 60歳
- 軽度近視
- 眼鏡使用歴なし
これまで
今まで運転時のみ眼鏡、裸眼で生活していた
理由
累進レンズでは強い加入が必要であり、適さないと判断したため
累進レンズを処方する例
- 45歳
- 軽度遠視
- 眼鏡使用歴なし
これまで
特に眼鏡を必要としなかった
理由
加入度数が少なくて済む40代から累進レンズを使用するのが理想的と説明し、理解を得られたため
眼鏡の使用歴
眼鏡は種類によって使用方法が異なる
ので、
患者さんが使い慣れた眼鏡の種類
を必ず聞くようにします。
以下の方は累進レンズには向いていない
可能性が高いです。
- 遠用と近用を使い分けて単焦点のみ使用していた
- 二重焦点の眼鏡の使用に慣れている
目線の使い方が難しかったり、装用
テストで違和感が強くなったりする
ことがあります。
生活スタイル
患者さんの生活スタイルを聞くと
単焦点か累進レンズかを判断する
根拠になります。
単焦点レンズが向いている生活スタイル
長時間の一定作業が多い人
- 長時間パソコンだけ見る
- 長時間の読書
- 長時間の裁縫
累進レンズが向いている生活スタイル
遠くと近くを交互に見ることが多い人
- ナビやメーターを見ながら運転する
- 新聞を見ながらテレビを見る
- 資料を見ながらパソコンを使う
理解力
患者さんの理解力も単焦点レンズか累進
レンズかの判断材料にしましょう。
累進レンズにあまり向いていない人
- 理解力に乏しい人
- 思い込みの激しい人
- 話を聞いてくれない人
- 累進レンズへの期待値が高すぎる人
累進レンズの扱い方をしっかり理解できて
いない患者さんへの処方は、トラブルの
原因にもなるため避けた方が無難です。
中には「友人が良いとすすめてくれた」
など思い込みで希望される方もいます。
誤解を与えないように説明と提案をして
いきましょう。
本人の希望
本人の希望がある場合は、なぜその
レンズにしたいのかまで聞き取ります。
近々両用レンズを処方した例
本人希望はパソコン用の老眼鏡を希望。
ヒアリングにより、スマートフォンとパソコンを交互に見ることが判明。
パソコン用老眼鏡だとスマートフォンを見る際に老眼鏡の掛け替えが必要と説明した。
近々両用レンズを提案し、理解を得た。
患者さんが眼鏡の種類の希望を言う場合は、なぜその眼鏡が良いのが理由を聞きましょう
まとめ
累進と単焦点のどちらを処方するか
迷った時は、この記事で紹介した6つ
のポイントをチェックしてみて下さい。
患者さんに言われるがまま処方すると、
逆に満足度を下げてしまう危険性があり
ます。
どちらも一長一短あるレンズなので、
何が患者さんにとって最適か、判断
材料としてなるべく多くの選択肢を
持っておきましょう。