弱視治療眼鏡の度数はどうやって決める?【屈折は?左右差は?斜視は?】
弱視治療眼鏡の度数をどうやって決めたらいいかわかりません
小児の弱視治療には眼鏡装用が基本中の
基本です。
検査に慣れないうちは、どのように度数を
決めていいかわからず混乱しますが、
ケースごとに考えるとわかりやすくなり
ます。
- 弱視治療眼鏡の度数の決め方【屈折・左右差・斜視の観点から】
弱視治療の基本となる眼鏡合わせは、
視能訓練士にとって重要な検査の一つ
です。
ぜひ参考にしてみて下さい。
今回ご紹介する弱視治療眼鏡の度数の決め方は、あくまで一例となります
この記事を書いた人
- 歴20年の視能訓練士
- 小児の斜視弱視・GPが得意
弱視治療眼鏡の度数 〜ケースごとの考え方〜
弱視治療眼鏡の度数を決めるに際には、
ケースごとに考える必要があります。
今回は以下の3つの観点から考えてみま
した。
- 屈折
- 左右差
- 斜視
屈折ごとに眼鏡度数を考える
屈折ごとの眼鏡度数を考えてみましょう。
屈折度数が大きいほど弱視の程度は重く、
早急に治療を開始する必要があります。
調節麻痺薬の検査前のレフで強めの度数が
出た場合、アトロピンが選択されることが
あります。
例えば、
調節麻痺薬の検査前のレフ
R)+7.00D
L)+7.50D
アトロピン点眼後のレフ
R)+9.00D
L)+9.50D
このように強い遠視度数の場合は、斜視の有無に関わらず早急にR)+9.00D L)+9.50Dの完全矯正眼鏡をかけるということが選択されます。
※施設によって考え方や方針はさまざま
です。
緊急度の高い弱視にはアトロピン点眼後の完全矯正度数
比較的視力の上がりやすい弱視にはサイプレジンで生理的トーヌスを引いた度数が望ましいですね
左右差がある場合の眼鏡度数を考える
子どもは左右差があっても順応しやすい
ので、左右差の大きさを気にせずに処方
してOKです。
例えば、
RV= 1.0(1.2×S+2.00D)
LV= 0.2(0.4×S+7.00D)
大人が急にこの左右差をかけることは
できませんが、年齢が小さいお子さん
ほど難なくかけられてしまいます。
このとき、健眼もしっかり矯正しておき
ましょう。
小さなお子さんが左右差の大きな眼鏡を難なくかけている姿を見るたび、順応力のすごさに驚かされます
ただし個人差があるので、どうしても
かけられない場合には、かけられる左右
差から始めて、段階的に本来かけたい
眼鏡度数に近づけていきます。
例えば、
RV= 1.0(1.2×S+2.00D)
LV= 0.2(0.4×S+7.00D)のとき
R)+2.00D
L)+5.50Dならかけられる
慣れてきたので
R)+2.00D
L)+7.00Dにトライする
しかしまだ難しいので
R)+2.00D
L)+6.50Dにトライしてみる
という感じです。
斜視がある場合の眼鏡度数を考える
斜視がある場合には、内斜視か外斜視か
によって眼鏡度数を考慮しなければいけ
ません。
内斜視、特に調節性内斜視には、基本
アトロピンによる完全矯正値が選択され
ます。
調節性内斜視の以下の分類を再確認して
おきましょう。
屈折性調節性内斜視 | 眼鏡をかけることによって眼位が正位になる |
部分調節性内斜視 | 眼鏡によって内斜視は改善するが、まだ内斜視が残る |
非屈折性調節性内斜視 | 調節によって過剰に輻湊が起こるので、近くを見るとより内斜視になる |
中でも非屈折性調節性内斜視が疑われる
場合には、プラス3.00Dを加入して近見
眼位を確認、眼位が改善する場合には
二重焦点眼鏡を選択します。
以下一例をご紹介します。
非屈折性調節性内斜視の処方例
アトロピン後の屈折値
R)+4.00D
L)+4.50D
SPCT(SC)
Far 10ΔET
Near 30ΔET’
SPCT(CC)
Far ortho/
+3.00D付加にてNear ortho
この場合には、R)+4.00D L)+4.50Dに、加入度数+3.00Dを付加した二重焦点レンズが処方されます。
遠視の外斜視について
遠視の外斜視の場合、度数を強く入れる
と調節性輻輳が惹起されにくくなるため、
外斜視がより大きくなる場合がありますが
弱視治療が優先です。
視力が上がってきたら、眼位が一番良く
なるプラス寄りの度数を選択するといい
でしょう。
ただし最高強度のレンズが最高視力の
場合には、手術が視野に入ってくること
もあります。
弱視に加えて斜視があると混乱しますよね
内斜視は完全矯正が基本ということをまずは覚えておいて下さい
まとめ
弱視治療眼鏡の度数決定について、以下の
観点からご紹介しました。
- 屈折
- 左右差
- 斜視
屈折
- 強いほど緊急性、重篤性が高い
- アトロピン点眼後の完全矯正が基本
左右差
- 左右差があっても小児なら問題ないことが多い
- 健眼もしっかり矯正する
斜視
- 内斜視はアトロピンによる完全矯正が基本
弱視治療に関しては、施設ごとの考え方や
方針に違いがあります。
今回ご紹介した内容はあくまで一例と
して捉えていただき、参考にしてみて
下さい。
弱視治療眼鏡は、お子さんの弱視治療の基本となる大事な部分です
ぜひマスターしてそのお子さんに最適な眼鏡を処方してあげて下さいね!