【視能訓練士】転職のご相談はこちら ▶ 無料相談する

弱視治療の基本的な流れをマスターしよう【完全版】

弱視治療の基本的な流れ記事アイキャッチ
視能訓練士

弱視治療の流れがよく分かりません

弱視の早期発見・早期治療は、お子さん
の人生にも大きく関わってくる大変重要
な医療行為です。

弱視治療の一連の流れをしっかりと掴ん
で、弱視のお子さんが一人でも減るよう
にサポートしていきましょう。

この記事を書いた人

  • 小児の斜視弱視、GPが得意
  • 歴20年の視能訓練士

今回ご紹介する弱視治療の流れは、あくまで一例となります

弱視治療の流れは以下の通りです。

弱視治療の流れフローチャート画像
先輩視能訓練士

お子さんによって弱視の性質や程度はさまざまですが、弱視治療の基本的な流れを押さえておけば臨機応変に対応できます

それぞれ見ていきましょう。

目次

問診

問診票の画像

まずは問診を取ります。
1歳半健診や、3歳児健診で引っかかっ
て来院するだけではなく、気になる症状
があって受診する場合もあります。

弱視治療の参考になりますので、以下
の項目で詳しく記載してもらって下さい。

  • 現病歴(いつから、どんな症状)
  • 既往歴(出生時の様子や出生体重、全身疾患、発育状態)
  • 家族歴(親や兄弟の目の疾患の有無)
先輩視能訓練士

施設で弱視用の問診票を作っておくと聞き漏らしがなくなっていいですね

また、保護者との何気ない会話から治療
の参考となる項目を引き出せる場合が
あるので、会話は集中して聞いておきま
しょう。

現病歴

いつから? 

  • 2歳ごろから など

どんな症状? 

  • TVに近づいて見る
  • 顔をしかめて見る
  • 絵本を見るときに右目が内側に寄る
  • 顔を右に向けて左目で見ようとする など

発症時期や症状の詳細を知ることによっ
て、どんな弱視であるかある程度の予測
が立てられます。

既往歴

出生時の様子や出生体重は?

  • 在胎30週の低出生体重(1800g)で帝王切開
  • 黄疸 など

全身疾患は?

  • 難聴
  • ダウン症
  • 喘息
  • アトピー など

発育状態は?

  • 言葉の発達が遅い
  • 自閉症の傾向を指摘されている など

既往歴があるお子さんは、弱視を発症
しやすい傾向にあります。

先輩視能訓練士

既往歴があるお子さんへの対応は難しいですが、だんだんと慣れていきますよ

家族歴

親や兄弟で目の疾患がある人は?

  • 兄が不同視弱視
  • 父親が外斜視 など

弱視を発症する屈折異常には遺伝的な
要素が含まれる場合があります

家族歴も参考になる項目なので必ず聞
いておきましょう。

先輩視能訓練士

兄弟が未受診の場合は、兄弟も弱視の可能性があるので、受診を促すと親切です

診察前の検査

視力検査の画像

問診を取り終わったら、いよいよ検査
に入ります。

診察前に実施する検査は以下の通りです。

  • 屈折検査(他覚的、自覚的)
  • 眼位・眼球運動検査
  • 両眼視機能検査(立体視が評価しやすい)
  • 眼底検査

屈折検査 

  •  他覚的屈折検査
    レフケラ、スポットビジョンスクリーナー(SVS)
  •  自覚的屈折検査
    3歳未満は縞視力、絵視標、森実ドット
    3歳以上は字ひとつ
    7歳以上は字づまり(ただし視力不良の場合は字ひとつ)
    ※年齢はおおよその目安です。

屈折検査は弱視の有無を確認するため
に必須です。

まずは他覚的屈折検査です。
オートレフだけではなく、手持ちレフや
スポットビジョンスクリーナー(SVS)
がある場合には両方行なっておくと参考
データが多くなるのでおすすめです。

先輩視能訓練士

できるもの、嫌がらないものから少しずつデータを集めていきましょう

また、自覚的屈折検査である視力検査は、
治療において重要なデータとなります。

年齢や発達、集中力などを考慮しながら
視標を選んで測定して下さい。

小児は近見から視力が発達するため、
測れそうな場合は近見視力も測って
おきましょう

眼位・眼球運動検査

弱視には斜視が併発している場合が少
なくありません

眼位・眼球運動も必ず確認しておきます。

ヒルシュベルグ、クリムスキー、CUT、
SPCT、APCTなど、年齢やお子さんの
集中力に応じて斜視の測定方法を変えて
施行しましょう。

先輩視能訓練士

お子さんの気分によっては定量できない場合もありますが、なるべく定性は見たいですね

両眼視機能検査 

立体視(Lang、TST、シノプト)を測定
しておくことも有意義です。

弱視の治療前と治療後の立体視を比較
することで、治療効果の定量化に繋がり
ます。

眼底検査 

施設に無散瞳カメラがある場合には眼底
写真を撮っておくことをおすすめします。

診察室で眼底を見せてくれない場合も
あるので、写真としてのデータは非常
に有意義です。

先輩視能訓練士

嫌がる場合には全ての検査を一回で行なう必要はありません

できるものから少しずつデータを集め、お子さんが眼科を嫌いにならないよう心がけましょう

診察

診察風景の画像

検査が終わったら診察に入ります。

  • 医師による問診の確認
  • 眼位・眼球運動検査
  • 前眼部・眼底検査
  • 大まかな治療方針の決定

医師による問診の確認

まずは医師が直接患者さんと話をし、
問診を踏まえながら現状を把握します。

眼位・眼球運動検査

もう一度医師による眼位・眼球運動を
行ない、問診内容や診察前検査と相違
ないかを確認します。

前眼部、眼底検査

器質的な疾患がないかを前眼部、眼底
ともに確認します。

大まかな治療方針の決定

問診内容やデータを総合的に判断し、
医師が患者さんに説明の上、治療方針
を決定します。

先輩視能訓練士

例えば、調節麻痺薬(サイプレジンやアトロピン)で検査をしてから眼鏡処方をするなどですね

調節麻痺薬点眼後の検査

眼科検査の画像

診察で決定した事項や、医師の指示に
基づいて検査を実施します。

よくあるのが調節麻痺薬(サイプレジン
やアトロピン)を使用した以下の検査
です。

  • 調節麻痺薬点眼後の屈折検査
  • 調節麻痺薬点眼後の眼位検査
  • 散瞳後の眼底検査
  • 眼鏡処方

調節麻痺薬点眼後(サイプレジン、アトロピン)の屈折検査 

  • 他覚的屈折検査
    レフケラ、スポットビジョンスクリーナー(SVS)
  • 自覚的屈折検査
    3歳未満は縞視力、絵視標 
    3歳以上は字ひとつ
    7歳以上は字づまり(ただし視力不良の場合は字ひとつ)
    ※年齢はおおよその目安です。

サイプレジン後の眠気などで自覚的屈折
検査が実施できない場合がありますが、
他覚的屈折検査はなるべく行なって下
さい

先輩視能訓練士

調節麻痺薬による検査は、お子さんにとっても保護者にとっても負担の大きな検査です

自覚的屈折検査が難しい場合でも、他覚的屈折検査だけは何とか行ないたいところです

調節麻痺薬点眼後(サイプレジン、アトロピン)の眼位検査

調節麻痺後に斜視が出現することもある
ので、眼位も確認しておきます。

散瞳後の眼底検査

サイプレジンやアトロピンによって散瞳
しているので、眼底検査は必須です。

散瞳カメラで眼底写真を撮影したり、
眼底に異常がないかを医師がチェックし
ます。

眼鏡処方

データに基づいて、屈折矯正が必要な
場合には眼鏡処方となります。

基本的には年齢に応じた屈折の正常値
から+2.0D以上強い場合に眼鏡処方
行なって下さい。

年齢正常値処方を要する値
3カ月S+4DS+6D以上
6カ月S+3DS+5D以上
1歳S+2DS+4D以上
2歳S+1DS+3D以上
3歳S+1DS+3D以上
※視能矯正マニュアル 2006年より参照

施設にもよりますが、

  • 内斜視のある場合はアトロピンのデータに対して基本完全矯正
  • 斜視のない場合はサイプレジンやアトロピンの値から生理的トーヌス(0.5D〜1.0D)を引いた値

での処方が一般的になります。
乱視はレフ値どおりに入れる施設が多い
です。

治療と訓練

塗り絵をしている画像

次に弱視における基本治療と訓練に
ついてご紹介します。
※以下は全て施設によります。

眼鏡装用

まずは完全矯正の眼鏡装用による屈折
矯正です。

視力の感受性期には、中心窩にしっかり
と刺激を与えて視力の発達を促さなくて
はいけません。

弱視治療は屈折矯正にはじまり、
屈折矯正に終わる
と言われるほど
眼鏡装用は重要です

基本、お風呂と寝る時以外はかけて
もらいたいのですが、初めての眼鏡
はそう上手くはいきません。

工夫をしながら少しずつ慣れていける
よう保護者の方にアドバイスをしま
しょう。

先輩視能訓練士

例えば、おやつを食べる時やTVを見る時など、好きなことをする時に眼鏡をかけるのをおすすめしてもいいですね

アイパッチ

不同視弱視(両眼の屈折度差が2.0D以上
の差)の場合は、片眼の視力1.0が数回
確認できた時点で*アイパッチの併用を
開始、アイパッチができない場合はアト
ロピンペナリゼーションを行ないます。

*アイパッチは商標名です

アイパッチをする意味を保護者やお子
さんにしっかりと説明をし、無理のない
範囲で少しずつ時間を増やしていきましょ
う。

先輩視能訓練士

医師の指示どおりにアイパッチができない場合も多々ありますが、お子さんがアイパッチを嫌いになってしまわないよう声をかけてあげるといいですね

家庭訓練

アイパッチをしながら、塗り絵や迷路、
ビーズ通し、TV、ゲームやYouTube
行なうと、より見ようとする意識が高まる
ため、弱視治療の効果が大きくなります。

先輩視能訓練士

いつもは禁止されがちなYouTubeやゲームなども、アイパッチの間だけはOKという決まりを家庭で作ってもいいですね

視機能の評価

視力のグラフ画像

定期的に眼科を受診してもらい、弱視治療
の効果が上がっているか、視力と合わせて
視機能の評価を行なっていく必要があり
ます。

眼鏡チェックと視力検査

眼鏡が出来上がり次第受診してもらい、
以下の項目で確認します。

  • 眼鏡が処方箋どおりできているか
  • 一日何時間ぐらい装用できているか、装用を嫌がっていないか
  • 眼鏡のフィッティングはOKか
  • (視力検査をした上で)度数変更の必要がないか
  • (アイパッチ治療をしている場合は)アイパッチができている時間

アイパッチをしている場合は、遮蔽眼の
視力が下がっていないかも必ずチェック
をします。

眼位検査

裸眼と完全矯正、眼鏡を装用した時の
眼位をそれぞれ測ります。

眼鏡を装用した際に、斜視が出現する
際には度数を微調整する場合もあります。

両眼視機能検査 

眼鏡装用やアイパッチを行なう上で、
視力が向上してきた際には、立体視が
上がっているかもチェックします。

左右の視力差が大きい場合は立体視は
不良ですが、段々と弱視眼の視力が向上
してくるにつれて立体視の成績も上がっ
てきます。

立体視の測定は、治療を行なう上での
定量的評価の一つになります。

先輩視能訓練士

視力が上がって、立体視まで向上するとこちらまで嬉しくなりますよね

まとめ

弱視治療の流れについて以下の手順で
ご紹介しました。
※ただし施設によって方針が多少違う
場合があります。

弱視治療の流れフローチャート画像

弱視の早期発見・早期治療は、お子さん
の将来に関わる大変重要な項目です。

治療においては、眼科スタッフだけでは
なく保護者の協力も大切なので、治療の
意味や重要性を伝えられるよう流れに
ついて再確認してみて下さい。

先輩視能訓練士

弱視治療は、視能訓練士のサポートが必要です。
頑張って下さいね!

Contactメディアでは、臨床でのさまざま
なお悩みが解決する記事を多数掲載して
います。ぜひ合わせてご覧下さい。

 

弱視治療の基本的な流れ記事アイキャッチ

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次