【小児の間欠性外斜視】プリズム眼鏡の合わせ方と装用後のチェックポイント

臨床において、小児の間欠性外斜視は
珍しいことではありません。

まずは眼鏡装用が基本中の基本ですが、
プリズム眼鏡にした方がいいという場合
もあります。

訓練を併用することもありますが、この記事では訓練対象にならない例について取り上げています

お子さんの将来の視機能にも関わって
くるので、視能訓練士として必ず押さ
えておいて下さい。

今回ご紹介する小児のプリズム眼鏡処方は、あくまで一例となります

プリズム眼鏡が必要な場合と必要ではない場合

まずは小児の間欠性外斜視において、
プリズム眼鏡*が必要な場合と必要では
ない場合を見ていきましょう。

*本項目のプリズム眼鏡は、組み込み
タイプ、フレネル膜タイプのどちらも
含みます

必要な場合

プリズム眼鏡が必要な場合は以下の通り
です。

複視を訴えている場合

小児の間欠性外斜視は、抑制がかかって
いることが多いのですが、まれに複視を
訴えるお子さんがいます。

複視があると生活や学習に支障が出る
ため、対応が必要です。

また、融像できないと立体視まで育たない
ので、プリズム眼鏡でphoriaを保てて複視
が消失する場合には、プリズム眼鏡を処方
してみて下さい。

※ただし斜視の角度によっては、訓練に
よる治療を選択する施設もあります。

眼精疲労を訴えている場合

何とか自分でphoriaを保ててはいるものの、
斜視角が大きかったり、すぐにtropiaに
なる場合には、眼精疲労を訴えることが
あります。

眼精疲労も複視と同様、生活や学習面
へ影響を及ぼします。

プリズム眼鏡で症状が改善する場合には
処方を検討してみて下さい。

プリズムを装用するとphoriaが保ちやすくなる場合

phoriaよりもtropiaの頻度が多い間欠性
外斜視のお子さんで、プリズムを装用
するとほぼphoriaになるという場合が
あります。

プリズム眼鏡を装用することで手術を
せずに眼位が保てる上、両眼視の向上
も期待できます。

必要ではない場合

間欠性外斜視でありながら、プリズムを
装用しなくていい場合もあります。

斜視角が小さく、自分でphoriaを保てる場合

斜視角が小さくて、自分で難なくphoriaを
保てる場合にはプリズム眼鏡の必要はあり
ません。

眼位検査をするとたまにtropiaが見られる
けど・・というぐらいで、日常ほぼphoria
というような場合です。

やや過矯正の眼鏡をかけるとphoriaを保てる場合

やや過矯正の眼鏡をかけることで、眼位が
改善する場合には、プリズム眼鏡にする必要
はありません。

例

これは、過矯正レンズでわざと調節性輻輳を惹起させた方法になります。

手術の適応になる場合

斜視角が大きい場合や、両眼視機能が
なく整容的な手術を希望する場合には、
プリズム眼鏡は必要ありません。

ただし、施設によっては手術前にプリズム
眼鏡を装用して両眼視機能の発達を促し、
術後の戻りを少なくさせるという方法を
取る場合があります。

注意

次に小児の間欠性外斜視のプリズム眼鏡
の合わせ方を見てみましょう。

小児の間欠性外斜視のプリズム眼鏡の基本

手術が選択されない場合のプリズム眼鏡
の合わせ方をご紹介します。

プリズム眼鏡の基本的な考え方は以下の
通りです。

最も重要なのは、眼位を測った後、
phoriaになる最小のプリズム度数を選択
することです。

最小のプリズムを装用しても複視や眼精
疲労などの訴えがある場合には、お子さん
の自覚に合わせてプリズム度数を調整する
場合もあります。

組み込みプリズムは片眼5Δずつが原則

一枚のレンズに組み込めるのは最大で
5Δまでの眼鏡屋さんが多いです。

眼鏡屋さんによっては、6Δ以上も可能
というところもあるので、事前に確認
することをおすすめします。

片眼の場合は斜視眼に入れる

プリズムを片眼に入れる場合には、ずれ
やすい斜視眼の方に入れることが多いです。

矯正すべき斜視角が小さい場合や、経済的
な観点からフレネル膜を一枚にまとめたい
場合などには片眼のみになります。

斜視角が大きい場合はフレネル膜で対応する

もしも両眼で合計約10Δ以上のプリズムが
必要な場合には、組み込みタイプでは対応
しきれないので、フレネル膜プリズムを
ご案内して下さい。

プリズム眼鏡が合っているかのチェックポイント

定期検診では、プリズム眼鏡が合って
いるかを以下の点で必ずチェックして
下さい。

※本項目では、プリズム度数のみの説明
になります。

矯正眼位とプリズム眼鏡上の眼位測定

矯正眼位とプリズム眼鏡上の眼位を測って
比較します。

例

しかし、斜視角が増大していてプリズム
眼鏡が合わなくなっていたり、phoriaが
保てていない場合には、プリズム度数の
調整が必要になってきます。

複視や眼精疲労の確認

プリズム眼鏡を日常装用していて、複視
が出ていないか、眼精疲労が出ていない
かも確認します。

自覚が大事なので、たとえphoriaになって
いても自覚的に複視があればプリズム度数
の調整が必要です。

まとめ

小児の間欠性外斜視に対するプリズム
眼鏡の合わせ方と定期検診のプリズム
眼鏡チェックの仕方についてご紹介し
ました。

25Δ以下で手術が適応にならない間欠性
外斜視の場合、プリズム眼鏡合わせを取り
入れることで、訓練の有無にかかわらず
両眼視機能の発達を促しやすくなること
があります。

小児の間欠性外斜視へのプリズム眼鏡
合わせは、視能訓練士としてしっかりと
知識を持っておくべき領域なので、ぜひ
参考にしてみて下さい。