
情報をうまく引き出す問診術【再診・小児におけるコツも解説】

検査時に患者さんをお呼びして、
まず最初に行うのが問診です。
臨地実習中や入職したばかりの
新人が任されることも多いでしょう。
問診は、検査や診察をスムーズに
行うためにとても重要な項目です。
この記事では、問診において検査や診察に
必要な情報をうまく引き出すための
ポイントを解説します。
なぜ問診が大切なのか?
問診の段階で必要な情報を聞き出せれば、
検査や診察の効率化につながります。
問診が不十分だと必要のない検査をしたり、
診察に時間がかかったりと正しい診断結果が
出るまでに遠回りしてしまう
可能性があります。
また、問診から得られた情報で検査の方向性や
注意すべきポイントが把握できることも多く、
視能訓練士が検査を行う上でも役立ちます。
「緊急性があるかどうか」も常に意識しよう
問診では、緊急性があるかどうかも
常に意識しましょう。
早急な診察や処置が必要なケースを
見抜くことが重要です。
具体的には以下のような
症状や疾患が挙げられます。
緊急度の高い眼科疾患
- 網膜中心動脈閉塞症
- 網膜剥離
- 急性緑内障発作
- 眼内炎
- 眼外傷
緊急性があると考えられる症状
- 急激な視力低下(「急に見えなくなった」)
- 激しい目の痛み
- 眼外傷
急激な視力低下に加えて
「視界にカーテンのような膜がかかって見える」
などの訴えがある場合は、
網膜剥離の可能性も考えられます。
「充血やかゆみ」は
流行性角結膜炎の可能性も考える
流行性角結膜炎(以下EKC)が疑われる場合は
院内感染を防ぐため、検査を行わず診察に回す
必要があります。
「充血」「めやに」「かゆみ」などの
訴えがある場合は、
EKCの可能性も考えながら問診を進めましょう。
確認したいポイントは以下の3点です。
- 充血やめやにの程度
(外見上の所見も観察) - かゆみの強さ
- 周囲に似たような症状の人はいないか
問診で気を付けたいポイント
問診では、患者さんの訴えをそのまま
聞き流せばよいわけではありません。
話を聞きながら要点をまとめ、
詳しく確認すべき内容に対しては、
こちらから質問することも必要です。
問診を取りながら、患者さんと一緒に
訴えを整理していくイメージで行いましょう。
患者さんとのコミュニケーションは、問診や
検査をスムーズに行うためにとても大切です。
しかし、時には「問診をしていたはずが、
気付いたら患者さんと世間話になっていた」
ということもあります。
話が逸れていることに気付いたら軌道修正し、
流されないように意識しましょう。
初診における問診のポイント
初診では問診票を書いてもらうため、
問診票をもとに患者さんの話を聞いていきます。
主訴が多い場合は「最も困っている症状はどれか?」と確認し、受診した理由や優先順位を
明確にしましょう。
「特に困っているわけではないが、
当てはまる症状には丸をつける」という
患者さんも少なくありません。
初診の問診では目の症状に加えて
以下のようなことも確認し、
患者さんの情報を集めます。
- これまで眼科で治療や手術を
行ったことはあるか - 体の病気や既往歴
(糖尿病があればHbA1c値も確認) - 現在飲んでいる薬
- アレルギーの有無
- コンタクトレンズ装用の有無
- 交通手段(散瞳の可能性が考えられる場合)
「見えにくい」などの訴えがある場合は
散瞳の可能性も考慮し、
交通手段も確認しておきましょう。
実際の問診例|初診
例)初診の60代女性
「急に見えにくくなった」
・「急に」とは具体的にいつ?
数時間前?数日前?数か月前?
→ 緊急性の有無を確認
・どのような見えにくさ?
→ かすむ、ぼやける、真っ暗になるなど
・見えにくいのは右目?左目?両目?
・見えにくいのは遠方?近方?
・眼鏡は装用している?
→ 装用している場合:眼鏡をかければ見える?
※見えにくい=「眼鏡をかければ見えるが、
裸眼だと見えにくい」という場合もある
・来院時の交通手段は?
→ 主訴から散瞳の可能性が考えられるため
再診における問診のポイント
再診の問診は「変わりない」の
一言で終わることも多いですが、
患者さんからの訴えや情報を
聞き流さないように注意しましょう。
特に、眼鏡処方や手術、レーザー後の問診は
丁寧に行ってください。
問診の「聞き方」も大切です。
「変わりないですか?」だけではなく、
「前回は〇月に来院されていますが、
その後目のことで変わった点や気になる点は
ありましたか?」という聞き方をすることで、
患者さんも前回受診時以降のことを
イメージしやすくなります。
また、問診時には特に訴えがなかったとしても、
その後の視力検査で前回値よりも
明らかな視力低下が認められる場合は、
再度見え方について確認しましょう。
実際の問診例|再診
例)50代男性
「前回、初めて近用眼鏡を処方した」
・眼鏡は作成したか?
→ 作成していない場合:
その理由は?作成する意思はあるか?
・本日は作成した眼鏡を持参しているか?
→ 処方通りか度数を確認
・作成した眼鏡を使用しているか?
→使用していない場合:
その理由は?装用感?見えにくい?
→使用している場合:
装用感はどうか?気になることはないか?
小児における問診のポイント
小児の問診は基本的に保護者に
対して行うことが多いですが、
受け答えが可能な年齢であれば本人に対しても
行います。
その場合は必ず保護者からも
普段の様子を聞き出し、
本人の訴えと照らし合わせましょう。
心因性視力障害が疑われる場合は、
本人と保護者への問診を同じ場所で
行わないよう配慮してください。
実際の問診例|小児
例)小学2年生の女児
「学校健診で両目ともC判定だった」
(本人に対して)
- 学校の席は前から何番目?
- 授業中は黒板の字が見える?
- 見えにくいことはない?
(保護者に対して)
- 検診で指摘されたのは今回が初めてか?
- 目を細めるなど、見えにくそうに
している様子はあるか? - 目に関して気になることや様子はあるか?
問診のポイントまとめ
患者さんをお呼びして一番最初に行う問診は、
眼科検査や診察の基本です。
問診時に情報をうまく引き出すことができれば、
その後の検査や診察が効率的に行えるため、
結果的に患者さんの負担も軽減できます。
問診の聞き出し方や言葉選びによっても、
患者さんから得られる情報量は変わってきます。
患者さんの気持ちに寄り添って
「どのような聞き方をすれば話しやすいか」と
試行錯誤したり、
「こんなことも聞いておけばよかった」と
振り返ったりしながら、
問診術を高めていきましょう。
参考)
https://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/disease/index.cgi?c=disease-2&pk=388