眼鏡処方の流れとポイントを解説!【知っておきたい基礎編】
眼鏡処方って何を重視して聞けばいいかわからない。
本当に自分のやり方で合っているのか不安…
眼鏡処方は患者さんとコミュニケーション
を取りながら、可能な限りニーズに合った
眼鏡を提案していく検査です。
検査を進めながら考えなければならないこと
や患者さんに説明することも多いため、
難しく感じたり、必要以上に時間がかかって
しまったりという人も多いかもしれません。
眼鏡処方の基本的な流れと
それぞれの検査項目において
押さえておきたいポイントを解説
眼鏡処方の流れ
まずは、
眼鏡処方の基本的な流れを
項目ごとに解説します。
- 問診
- 視力屈折検査
- 装用テスト度数決定
- 装用テスト
- 処方度数決定
①問診
問診では、
患者さんのニーズや日常生活を
詳しく聞き取ります。
特に、
「どのようなことに困っているか」
「不自由を感じているか」
という点を意識します。
その上で、
「眼鏡を作りたいと思った理由」
を深堀りしましょう。
中には眼疾患による矯正視力不良など、
不自由を感じていることが眼鏡では
解決できないケースもあります。
患者さんのニーズに対して眼鏡で
どこまで対応できるのか?
問診の時点である程度整理しておくと、
眼鏡処方の流れや方向性を決める上で
役立ちます。
②視力屈折検査
眼鏡処方時の視力屈折検査は、
いつも以上に丁寧に行います。
以下のことを常に意識しながら
検査を行いましょう。
- 球面・乱視度数や軸の微調整
- 検査中に目を細めていないか
- 屈折に対して妥当な視力が得られているか
- 過矯正になっていないか
患者さんには、
「今日は眼鏡を作るので、
少し時間をかけて視力検査していきますね」
と事前に伝えておくと、
検査協力が得られやすくなります。
また、
前回値と比べて、視力・屈折に
大きな変動がないかどうか
も必ずチェックしてください。
変動が大きい場合は医師に確認し、
処方を見送ることもあります。
「今は眼鏡処方はやめたほうがいいかもしれません。医師と相談しましょう」と説明するのも大切な役割です
③装用テスト度数決定
完全矯正値が得られたら、それをもとに
実際に処方する度数を決めていきます。
処方度数は視力だけでなく、
- 左右差
- 乱視度数
- 患者さんのニーズ
(眼鏡を作成する目的) - 今使用している眼鏡の度数
などを考慮します。
患者さんが現在使用している眼鏡が
ある場合は、その度数を参考に度数を
決定することも多いです。
特に不同視や乱視が強い場合、
現用眼鏡の度数は
どのくらいの度数までなら
違和感なく装用できるか
という貴重な情報になるためです。
もし「いつも使ってるけど今日は持ってきていない」場合は、次回、眼鏡を持ってきてもらってから処方する方が良いこともあります
④-1 装用テスト
処方度数が決まったら、患者さんに
5~10分間ほど実際に装用してもらいます。
装用テストは、ただ患者さんに処方度数を
かけさせればいいわけではありません。
- 装用テストを行う理由
- どのような点を意識しながら過ごしてほしいか
を必ず伝えましょう。
この点が理解されていないと、
以下のように正しく装用テストが
できない可能性があるためです。
遠用眼鏡の装用テストなのに…
- ずっと椅子に座ってスマホを見ていた
近用眼鏡の装用テストなのに…
- 院内を歩いて「見えづらい」と訴えている
④-2 装用テスト時の説明例
装用テストをする際には次のような
説明を心掛けましょう。
しばらく待合室の中を歩いたり、
視線を動かしたりして、違和感や
クラクラする感じなどがないか
確認してみてください。
用途は遠くを見るための眼鏡なので、
日常生活で使うような視線の動きや
動作を行い、違和感がないか試します。
手元の見え方や違和感がないかどうか、
座った状態でしばらく確認してください。
この眼鏡は近く用の度数なので、遠くは
見えません。
かけたまま歩くと危ないので、
装用テスト中に席を立つ場合は
必ず外してください。
近用眼鏡の装用テストでは、うっかり
かけたまま立ち上がろうとする人もいます。
いったん検眼枠を外し、装用テストをする
場所まで持って行ってからかけてもらうのが
いいでしょう。
普通の視力検査は「矯正視力が出るかどうか」が大事ですが、眼鏡処方は「ニーズを満たせるかどうか」が重要です
⑤処方度数決定
装用テストを行い、
「これなら大丈夫そう」
という反応が得られれば、
処方度数は決定です。
決定後には、
- まずは数週間使ってみてもらうこと
- 合わないと思ったら遠慮なく教えてほしいこと
といったことを伝えます。
もし、「やっぱりなんだか見づらい」
となれば状況の聞き取りから
再スタートです。
一度の処方はでうまくいかないこともあります。
「合わないのに言えずにいる」ということがないよう、信頼関係を築くことが大切です
眼鏡処方の重要ポイント
ここからは私の臨床での経験をもとに、
眼鏡処方時に押さえておきたい
重要ポイントを解説します。
- 日常生活をイメージしながら検査する
- デメリットもしっかり説明する
- 「眼鏡への期待値のズレ」を見逃さない
①患者さんの日常生活を
イメージしながら検査する
患者さんの日常生活を具体的に想像
しながら検査することが重要です。
患者さんは処方された眼鏡で
日常生活を送ります。
検査室での見え方だけではなく、
問診や検査中のコミュニケーションで
患者さんの日常生活を具体的に
イメージしながら検査を進めましょう。
- 眼鏡は常にかける?
- 必要時のみ?
- 仕事はしている?
- どんな仕事?
- 車の運転はする?
など
「運転する」と答えた場合も、
普通免許か二種免許かなど
なるべく細かく聞き取ります。
- 何を見たいのか?
- 新聞?
- 文庫本?
- パソコン?
- 具体的な視距離は?
- 遠近両用のニーズはある?
など
特に重要なのは「見たいものまでの距離」
です。
患者さんの年齢から残存調節力を推測し、
視距離までの必要調節力を計算しながら
それを補う眼鏡を作る必要があります。
近用眼鏡には計算が必要になるものの、教科書通りにはいかないことも多いものです。
装用テストで患者さんの自覚も重視しましょう
②デメリットもしっかり説明
眼鏡処方のメリットだけでなく
デメリットもしっかりと説明しましょう。
デメリットに対する説明が足りていないと
- 「こんなはずではなかった」
- 「せっかく眼鏡を作ったのに、
思っていた見え方と違う」
など、クレームに繋がる可能性もあります。
デメリットの説明例
この度数は、はっきりと良く見えますが、
慣れるまで違和感が出る可能性があります
かけやすさ(装用感)を重視して
乱視の度数を調整したので、
見え方は少し物足りないかもしれません。
特に、遠近両用眼鏡は
- 「遠くも近くも良く見える万能な眼鏡」
というイメージを持っている
患者さんが多いです。
初めての患者さんにはデメリットも
理解してもらえるように説明しましょう。
遠近両用メガネのデメリット説明例
一枚のレンズに遠くの度数と近くの
度数が入っているので、視線の動かし方
など使い方にコツが必要です。
人によってはなかなか慣れなかったり、
難しく感じたりすることもあります。
使い方に慣れるまでは、階段を降りる
ときなどに十分注意してください。
足元が見えにくく、
危なく感じることがあります。
遠近両用は人を選ぶ眼鏡です。
患者さんが希望していてもおすすめできない場合は、できない理由をしっかり伝えましょう
③「眼鏡への期待値のズレ」
を見逃さない
「眼鏡をすればすべての問題が解決する」と
期待値が高すぎる患者さんの誤解を解くことも
大切です。
- 「眼鏡を作れば良く見えるはず」
- 「不自由が解消できるはず」
という理由から眼鏡処方を希望される
患者さんはとても多いです。
しかし、
眼疾患による矯正視力の不良や
不同視のため眼鏡では両眼を完全矯正
できないなど、
眼鏡では患者さんのニーズや不自由を
解決できないケース
も多くあります。
眼鏡で解決できない場合は、以下の点を
丁寧にわかりやすい言葉で説明しましょう。
- 眼鏡では解決できない具体的な理由
- どこまでなら眼鏡で対応できるのか
- 眼鏡以外に改善策はあるのか
コミュケーションをとりながら、「この人はちょっと勘違いしているかも」というポイントを見逃さないようにしましょう
眼鏡処方の流れとポイントまとめ
眼鏡処方において最も大切なのは、
患者さんと一緒に検査を進めていくこと
です。
ニーズに対して眼鏡でどこまで対応できるのか、
なぜこの度数を選んだのかなど、常に患者さんに
説明します。
検者側が一方的に検査を進めることが
ないように注意しましょう。
患者さんをよく観察してコミュニケーションを
とれれば、必ずニーズにあった眼鏡処方が
できるようになりますよ。
眼鏡処方のポイントがわかりました!明日から実践してみます!
ひとつひとつの件数を丁寧にこなしていけば、ちゃんと上達しますよ!
がんばってくださいね!