【40~50代】初めての遠視眼鏡を処方する手順とポイント
遠視用の眼鏡ってどうやって説明したらかけてもらえるんだろう?
40代以降で初めて遠視の眼鏡を
処方する場合は、近視と比べて
アプローチの方法が異なります。
「自分は目が良い」と思っている
患者さんに対し、遠視眼鏡を常用
する必要性をまず理解してもらう
必要があります。
今回は、初めての遠視眼鏡処方に
ついて、患者さんへの説明や処方
のポイントを解説します。
この記事を書いた人
- 歴10年の視能訓練士
- 斜弱・眼鏡処方が得意
初めての遠視眼鏡は十分な説明から
患者さんの多くは、若い頃に裸眼で
不自由なく見えていたため、以下の
ような認識を持っている方が多いです。
- 自分は目が良いので、眼鏡は必要ない
- 眼鏡を装用すること(特に常用)に抵抗がある
- 遠視や老眼についてあまりよく理解できていない
そのため、まずは「遠視とは何か」
や「眼鏡をかける理由」などについて
正しく理解してもらうところから
スタートします。
遠視とは何かを説明
遠視の説明例
- 遠視とは、遠くを見る時も近くを見る時も、ピント合わせの筋肉を使って頑張らないといけない目である。
- 若い頃はピント合わせの筋力が十分にあり、たくさん頑張れるため問題なく見える。
- 年齢を重ねるとピント合わせの筋力が落ち(※)、今までのようにピント合わせを頑張れなくなり、遠くも近くも見づらくなる。
(※)老視
遠視最大の主訴の一つは「眼精疲労」です。
目が疲れやすいのも、常にピント合わせの筋肉が頑張っているためだと伝えて下さい。
遠視の眼鏡が必要な理由を説明
遠視眼鏡の説明例
- 遠視の眼鏡はピント合わせを助けてくれるため、頑張って目の筋肉を使う必要がない。
- そのため、遠視の眼鏡をかければ、遠くも近くも今より楽に見えるようになる。
- さらに、目の筋肉が休まるため、眼精疲労が軽減する。
- 常に目の筋肉を楽な状態に保つため、遠視の眼鏡はかけっぱなしにする必要がある。
老眼鏡のようにかけたり外したりするものではないということですね
遠視と老眼(老視)の違い
老眼との違いの説明例
- 老眼(※)とは手元を見るために必要なピント合わせの力が衰え、老眼鏡がないと近くが見えない生理現象のこと。
- 遠視は子どもでもなるが、老眼は年を重ねると起こるものであり、遠視と老眼は全く異なる。
- 遠視用の眼鏡は遠くを見る時に使うが、老眼鏡は近くを見る時に使う。
- そのため、遠視用、老眼用と二種類の眼鏡が必要となる。
※患者さんが「老眼」という言葉を使ったら、検査者も合わせて使っていいでしょう
遠視と老眼の違いを説明できると、小児の遠視眼鏡を処方する際、保護者への説明にも役に立ちます
遠視の程度別|処方のポイント
遠視の度数や程度によっても、
提案できる遠視眼鏡の処方値や
日常での使い方が異なります。
ここでは、度数の程度ごとに
処方ポイントを解説します。
S+1.00Dの遠視の場合
実際の処方例
42歳女性 会社員 | |
主訴 | ・夕方になると疲労感(+) ・遠くの見え方は困っていない ・仕事はデスクワーク |
完全矯正値 | R 1.0p(1.2✕S+1.25D) L 1.0p(1.2✕S+1.25D) |
眼鏡処方度数 (遠用) | R (1.2✕S+0.75D) L (1.2✕S+0.75D) |
眼鏡装用後の感想 | ・疲労感がなくなった! ・全体的な見え方は変わらない |
眼鏡度数の決定方法
- 裸眼視力も出ており、年齢も若いことから、おそらく完全矯正は不要(完全矯正だとかえって違和感や見づらさを訴える可能性)
- 完全矯正から1~2段階弱めた度数を起点にし、±0.25Dずつ変え、自覚的に最も楽に見える度数を決定する
処方のポイント
+1.00D前後の40代ではまだ調節力が
あるため、裸眼でも遠くの見え方に
不自由しておらず、手元も全く見え
ないというわけでもない。
そのため、近視眼のような明確な
見やすさを訴求するのではなく、
現状訴えている疲れ、頭痛、肩こり
などのつらい症状を緩和することが
目的であると伝えると良い。
常用を勧めたいところですが、裸眼視力も良いと常用してくれないことが多いです。
せめて仕事中だけでもいいので使ってもらえるよう説得しましょう!
S+2.00D以上の遠視の場合
実際の処方例
55歳男性 会社員 | |
主訴 | ・遠くも近くもはっきり見えない ・目の疲れや肩こり(+) ・運転する |
JB使用歴 | 老眼鏡のみ使用 |
完全矯正値 | R 0.6(1.2✕S+2.25D) L 0.5(1.2✕S+2.50D) |
眼鏡処方度数(遠用) | R (0.9✕S+1.75D) L (0.9✕S+2.00D) |
眼鏡処方度数(近用) | R (1.0✕S+4.25D) L (1.0✕S+4.50D) |
眼鏡装用後の感想 | ・運転もしやすくなった ・40㎝先の新聞もよく見える |
眼鏡度数の決定方法
- 裸眼視力も低く、年齢的にも調節力に期待できないことから、完全矯正に近い度数が必要かもしれないと予測できる
- 最低限、夜間の運転でも支障がないであろう0.9前後まで見えるようになれば良い
- 視力値の目標を0.9前後と決め、視力検査時に0.9が出ていた度数のレンズを入れる
- この度数を起点とし、±0.25Dを入れ、視力を保ちつつ自覚的に楽な度数を選定する
※視力検査時に、どの度数でどのくらいの裸眼視力だったか、数値をメモしておくと良い
処方のポイント
見えづらさを自覚しているため、
眼鏡装用への抵抗は比較的少ない
と思われる症例。
若い頃と違い、今後は眼鏡生活に
なることを伝える。
同時に、遠視と老眼は異なるため、
それぞれに合わせた眼鏡が必要で
あることも伝える。
遠視眼鏡が老眼鏡の役割を果たす場合
年齢が若い+遠視が弱い=遠視眼鏡が老眼鏡にもなる
調節力が残っている40代であれば、
遠視眼鏡が老眼鏡としての役割も
果たします。
+1.00~+1.50D程度の遠視度数の
場合、遠視の眼鏡をかけることで
近くがよく見えるようになります。
「40代で軽度遠視は遠視眼鏡で近くも見やすくなる」とセットで覚えます!
若くて弱い遠視なら1本の眼鏡で十分
遠視眼鏡で遠近ともに対応できそう
であれば、まずは遠用1本で眼鏡に
慣れてもらいましょう。
遠視の患者さんは眼鏡をかけること
自体に慣れていないため、たとえ
老眼鏡があった方が良かったとしても、
初めての眼鏡処方で遠用・近用の2本を使いこなせるかどうかわからない
というリスクがあるからです。
まずは遠視用眼鏡を1本作製し、眼鏡
装用に慣れてもらうことを優先した
方がいいですね。
ただし、将来的には必ず老眼鏡の併用、または遠近両用の眼鏡が必要になると伝えて下さい
まとめ
初めての遠視眼鏡処方では、
「遠視・老眼との違い」
「眼鏡が必要な理由」
などを順序立てて丁寧に説明する
必要があるため、近視の眼鏡処方
よりも時間がかかるかもしれません。
患者さんの年齢や遠視度数はもちろん、
ライフスタイルや性格などをよく把握
して、それぞれに合った処方度数を
提案しましょう。