【FOナイトセミナー主催】高橋慎也さんインタビュー(小沢眼科内科病院視能訓練士)
視能訓練士として臨床・研究に従事し、470人以上の登録者数を誇る視能訓練士の会『FUTURE OF ORTHOPTIST』で『FOナイトセミナー』の主催をしている高橋慎也さんにインタビューを行いました。
セミナーにかける高橋さんの熱い想いや、視能訓練士の未来像について語っていただきます。
略歴
大分視能訓練士専門学校
福岡県 林眼科病院勤務
熊本県 出田眼科病院勤務
茨城県 小沢眼科内科病院勤務
視能訓練士になったのは「たまたま」
視能訓練士になろうと思ったきっかけなどはありますか?
あまり勉強をして来なくて、たまたま選択肢に残っていたのが視能訓練士だったんです
私は小学生のころからコンプレックスを抱えていて、なるべく人前に出ることを避けていました。
ところが中学生に上がってからハンドボール部に入り、がむしゃらに打ち込んだら、ユースの日本代表候補生になれたんです。
ハンドボールは高校生でやめましたが、「こんな自分でもがんばれば結果が出せるんだ!」ということが大きな衝撃でした。
視能訓練士になろうと思ったきっかけは、高校卒業前に将来の進路を考えたとき、親から「医療職はどう?」とアドバイスされたことです。
当時はそこまで熱い意欲はなく、指定校推薦で勉強しなくても入学できた先が、たまたま視能訓練士学科だったんです。
視能訓練士学科に入ったら、もう国家試験を突破するまで「やるしかない」ですよね。
勉強をする経験がほとんどなかった私ですが、眼の授業だけは一点集中で猛勉強し、学科内でもトップグループに入れました。国家試験も特別難しいとは思いませんでしたね。
このような部活動や国試勉強から得られた「頑張っている人が認められるシステム」というのが、私の視能訓練士としての考え方に結び付いています。
就職先は自分らしく働けるところがいい
高橋さんにとって就職先へのこだわりはありましたか?
私には自由度の高い眼科病院が合っていると思っています
私は現職も含め3つの施設で働いた経験があり、いずれも眼科病院です。
実習先が眼科病院で、施設が整っていること、学べることが多かったことなどから、就職先は眼科病院がいいと決めていました。
実は一つ目の就職先で、現在のセミナー開催の土台が築かれたと言ってもいいくらいで、論文や臨床研究に熱心な院長の手伝いをさせてもらえたことが始まりなんです。
手伝いというと具体的には?
膨大なデータ集めや研究の同意書を得るなどですね
そのために必要な検査は何かなど、院長とひんぱんにディスカッションができる環境は、新しいことを色々やりたい私にとって、とても良かったんです。
努力の成果が認められたおかげで治験・臨床研究主任などの役職まで頂けましたが、もっと成長したかった私は、さらに自由度の高い職場へ転職を決めました。
二つ目の職場では主任というポジションを頂き、zoomを使った院内のオンライン教育を発起しました。
各部署に視能訓練士として院内セミナーを開催するというもので、前職の知識や経験がとても役に立ちました。
残念ながらコロナ禍で思うような働き方ができなくなり、自分らしく働ける場所を探した結果、現在の小沢眼科内科病院へ転職したんです。
小沢眼科内科病院では、これまで現場レベルでの提案しかできなかった革新的なアクションを起こしやすくなったのが大きいですね。
代表的なのがYouTubeで、各検査や手術の説明など多彩なコンテンツを提供しつつ、院内の患者さん向けにセミナー開催をするなど、私がやりたかったことが高い自由度で実施できるようになりました。
これも、小沢理事長と田中院長のご理解の賜物です。この場を借りて感謝を伝えたいと思います。本当にいつもありがとうございます!
FOナイトセミナーはこれまでの経験の結晶
『FUTURE OF ORTHOPTIST』内で夜9時から開催されている、視能訓練士による視能訓練士のためのオンライン勉強会。主催、司会進行は高橋さん。
FOナイトセミナーはどうやって発足したんですか?
最初はオフラインで、九州全域の知り合いの視能訓練士との懇親会がメインでした
もともと新しい知識を手に入れるのが好きなので、九州全域の視能訓練士協会主催の集まりによく顔を出していたんです。
その結果、いつの間にか大勢の視能訓練士の知り合いができていて、「オフラインで懇親会をしよう」と持ち掛けたら70~80名くらい集まってくれました。
相当な数ですね!
はい、中でも男性視能訓練士が8割以上でした
その後、やはりコロナ禍の影響で、どうしてもオンライン上で開催せざるを得なくなってしまったのですが、逆に「オフラインよりは集まるんじゃないか」という期待感はありましたね。
それで、全国どこからでも参加できる、視能訓練士のための正式な学びの場を作ろうと思い立ったんです。
FOナイトセミナーの運営は大変だが楽しい!
実際に運営してみていかがですか?
「人と違うことをやりたい、新しいことをやりたい」ということが実現できて楽しいです!
FOナイトセミナーを開催する前は、正直なところうまく行くか不安で仕方ありませんでしたが、今は時間帯も含め、このやり方がベストだと思っています。
目下のところ、座長(司会者)として場の回し方の難しさはまだまだ実感していますね。
講演者との掛け合いや、いかに持ち味を引き出すかが課題で、消化不良の講演内容に即席で補足したり、視聴者の知りたいポイントを拾い上げて質問したりと、すべてアドリブで、同じ時間の流れの中でこなさなければいけません。
できるだけ気軽に多くの方に視聴して頂けるよう、視聴料は1000円以下に設定し、集めた視聴料はzoomライセンスの維持費などに使用しています。収支としては利益はほぼない状態です。
運営はかなり大変ではありますが、新しいことに挑戦するのが性に合っている私にとって、高いモチベーションを持って取り組める場ですね。
FOナイトセミナーを誰でも発信できる場にしたい
高橋さんはFOナイトセミナーで視能訓練士業界をどう変えたいですか?
誰もが発信できる場にして、講演者も視聴者も学べる機会を作りたいですね
FOナイトセミナーを利用して、無名の人でもどんどん知名度を上げ、メーカーや眼科医など多方面で目に留まってもらえたら良いと思います。
検査のやり方や結果の読み方は必ずしも一つだけが正解ではなくて、臨床経験を積んだ人の数だけ考え方が違っていいと思うんです。
これまで視能訓練士たちは、そのような多様な方法を知る機会がありませんでした。
FOナイトセミナーを通じて、エビデンスに沿った多彩なやり方を知り、知識量を増やし、自分なりに使える部分の良いとこ取りができるようになれば、必ずや視能訓練士としての技量の底上げになるでしょう。
お金儲けが狙いなの?という声もあるそうですが…?
「学習には少しでも投資をする」というのが私の考えです
私見ですが、少額でも自分に投資することで学習意欲は高まると考えています。職場でも「FOナイトセミナーは投資だよ」と言っており、身内だから無料というわけではありません。
また、ご存じの通りFOナイトセミナーは視聴料が安価のため、講演者への謝金は微々たるものです。
それでも視聴者がご自身の研鑽のために「投資」してくれた視聴料は、講演者のモチベーションや責任感に影響を与えると思っています。
この想いに共感し、講演者を引き受けていただける同志には本当に感謝です!
有料セミナーで得たわずかな収益をそのまま別の無料セミナー開催に活用しているため、年間を通して運営の利益は出ません。
それでもセミナー開催をやめないのは、視聴者が増えても「視能訓練士として成長できる場を提供し続ける」ことを第一に考えているからです。
高橋さん、貴重なお話をありがとうございました!